附属書V ラテン・アメリカ及びカリブのための地域実施附属書
第一条 目的
この附属書は、ラテン・アメリカ及びカリブの地域の特別の状況に照らして、同地域においてこの条約を実施するための一般的な指針を提供することを目的とする。
第二条 ラテン・アメリカ及びカリブの地域の特別の状況
締約国は、この条約に従ってラテン・アメリカ及びカリブの地域の次の特別の状況を考慮する。
P 害を受けやすく、かつ、砂漠化又は干ばつによって深刻な影響を受けてきた広大な区域であって、その中で砂漠化又は干ばつが生ずる場所に応じて多様な特質を観察することのできるものが存在すること。そのような累積しかつ激化する過程が及ぼす社会上、文化上、経済上及び環境上の悪影響は、同地域に生物の多様性に係る世界最大の資源の一が存在することからなお一層深刻である。
Q 物理的、生物学的、政治的、社会的、文化的及び経済的要因(対外債務、交易条件の悪化、農産物、水産物及び林産物の市場に影響を与える貿易慣行等の国際経済の要因を含む。)の間の複雑な相互作用の結果として、影響を受ける地域において持続可能でない開発の方式が頻繁に利用されていること。
R 砂漠化及び干ばつの主要な影響として、生態系の生産性が急激に低下し、農業、牧畜業及び林業における生産量の減少並びに生物の多様性の喪失の形で現れていること。その結果として、社会的見地から貧困化、移住、国内の人口の移動及び生活の質の悪化がもたらされ、このため、ラテン・アメリカ及びカリブの地域においては、各国の環境上、経済上及び社会上の状況に適する形態の持続可能な開発を促進することにより砂漠化及び干ばつの問題に対して総合的な取組方法を採用する必要がある。
第三条 行動計画
1 ラテン・アメリカ及びカリブの地域の影響を受ける国である締約国は、この条約(特にその第九条から第十一条までの規定)及び自国の開発政策に従って、適当な場合には、持続可能な開発に関する自国の政策の不可分の一部として砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和するための国家行動計画を作成し及び実施する。小地域及び地域の計画については、ラテン・アメリカ及びカリブの地域の要請に適合するように作成し及び実施することができる。
2 ラテン・アメリカ及びカリブの地域の影響を受ける国である締約国は、国家行動計画の作成に当たって条約第十条2Uの規定に特別の注意を払う。
第四条 国家行動計画の内容
ラテン・アメリカ及びカリブの地域の影響を受ける国である締約国は、砂漠化に対処し又は干ばつの影響を緩和する行動のための国の戦略を策定するに当たり、自国の状況に照らして、条約第五条の規定に従って、特に次の事項を考慮することができる。
P 能力の向上、教育、啓発、科学上及び技術上の協力、資金並びに資金供与の制度
Q 貧困の撲滅及び人間生活の質の改善
R 食糧の安全保障の達成並びに農業、家畜類の飼育、林業及び多目的の活動の持続可能な開発及び管理の達成
S 天然資源の持続可能な管理(特に流域の合理的な管理)
T 高地における天然資源の持続可能な管理
U 土壌資源の合理的な管理及び保全並びに水資源の開発及び効率的な利用
V 干ばつの影響を緩和するための緊急時計画の作成及び適用
W 気候学的、気象学的、水文学的、生物学的、土壌学的、経済的及び社会的要素を考慮した砂漠化及び干ばつの起こりやすい地域における情報、評価及び監視に係る体制並びに早期警戒体制の強化又は確立
X 多様なエネルギー源の開発、管理及び効率的な利用(代替エネルギー源の促進を含む。)
Y 生物の多様性に関する条約に基づく生物の多様性の保全及び持続可能な利用
Z 砂漠化及び干ばつに関する人口学的な側面についての考察
[ この条約の適用を可能にし並びに特に砂漠化及び干ばつに関する行政上の構造及び機能を分権化するための制度上の及び法的な枠組みの確立又は強化(影響を受けた地域社会及び社会一般の参加を得たもの)
第五条 科学上及び技術上の協力
ラテン・アメリカ及びカリブの地域の影響を受ける国である締約国は、この条約(特にその第十六条から第十八条までの規定)に従い及び第七条に規定する調整のための制度に基づき、個別に又は共同して次のことを行う。
P 技術協力についての協力網並びに国、小地域及び地域の情報体系の強化並びに適当な場合にはこれらの世界的な情報源への組入れを促進すること。
Q 利用可能な技術及びノウハウの目録を作成し並びにこれらの普及及び利用を促進すること。
R 条約第十八条2Qの規定に従って伝統的な技術、知識、ノウハウ及び慣行の利用を促進すること。
S 技術移転についての要請を特定すること。
T 関連する既存の及び新たな環境上適正な技術の開発、適応、採用及び移転を促進すること。
第六条 資金及び資金供与の制度
ラテン・アメリカ及びカリブの地域の影響を受ける国である締約国は、この条約(特にその第二十条及び第二十一条の規定)に従い、次条に規定する調整のための制度に基づき、個別に又は共同して、自国の開発政策に従って次のことを行う。
P 砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和するための行動において具体的な成果を達成するため、公的な及び民間の投資による資金を供給する制度を合理化し及び強化するための措置を採用すること。
Q 自国の努力を支援する国際協力についての要請を特定すること。
R この条約の実施を確保するために二国間又は多数国間の資金協力のための機関の参加を促進すること。
第七条 制度上の枠組み
1 ラテン・アメリカ及びカリブの地域の影響を受ける国である締約国は、この附属書を実施するために次のことを行う。
P 砂漠化に対処し又は干ばつの影響を緩和するための行動を調整する国の中央連絡先を確立し又は強化すること。
Q 次の目的のために国の中央連絡先の間の調整のための制度を設けること。
=@情報及び経験の交換
a@小地域及び地域の段階における活動の調整
メ@科学上、技術上及び資金上の協力の促進
п@外部との協力についての要請の特定
行動計画の実施の監視及び評価
2 ラテン・アメリカ及びカリブの地域の影響を受ける国である締約国は、定期的に調整のための会合を開催するものとし、常設事務局は、当該締約国の要請に応じ、条約第二十三条の規定に従い、次のことを行うことによって当該調整のための会合の招集を円滑にすることができる。
P 他の調整のための取決めにおける経験を利用して効果的な調整のための取決めの構成に関する助言を与えること。
Q 調整のための会合について二国間及び多数国間の機関に情報を提供し並びにこれらの機関の積極的な関与を奨励すること。
R 調整のための手続を確立し又は改善することに関連する他の情報を提供すること。