環境ジャーナリストの会のページ激動する再生エネ支援策と環境金融
2019年10月15日グローバルネット2019年10月号
エネルギージャーナル社編集次長
今西 章(いまにし あきら)
スウェーデンの16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが2019年9月23日に米国ニューヨークで開かれた国際連合の気候変動サミットで演説した。グレタさんは気候変動問題について行動を起こしていないとして各国首脳を非難した。気候変動や海洋プラスチック問題など地球環境をめぐる脅威は現実のものとなり、対応に待ったなしの状況だ。
日本環境ジャーナリストの会は19年10月9日から11月17日までに全6回の連続講座を開き、激動する国内外の環境問題やそれに関わるビジネスの最新動向を第一線で活躍する専門家と現役のジャーナリストがわかりやすく解説する。具体的には、再生可能エネルギーや環境金融などビジネスをめぐる動き、地域循環経済の具体的事例などについて知り、聴講者は市民や消費者に向けた発信のコツを学ぶことができる(詳細は日本環境ジャーナリストの会(JFEJ)の公式WEBサイトを御覧ください)。
再生エネ政策は新たな支援制度に
日本の再生エネ政策は、大きな転機を迎えている。経済産業省資源エネルギー庁は、今秋から再生エネの固定価格買取制度(FIT)を抜本的に見直し、新たな支援制度の検討を開始した。そもそもFITは日本の再生エネ導入量を急拡大させるための起爆剤に当たる制度だ。導入に弾みがつくように、12年の開始年から3年間は固定価格を世界水準より高めにした。大型太陽光発電所や風力発電所を開発すれば、20年間高い価格で売電できる。
さらに20年間決まった価格で売電できるのは、発電所開発費用を投融資する銀行や信用金庫などの金融機関の資金を非常に呼び込みやすかった。発電所の20年間の総収入をある程度予測できるので、遅くとも10年半ばで投融資を回収できることを容易に判断できるのだ。こうしてエネルギーと経済の好循環により、参入障壁が低く、他の再生エネ電源よりも比較的短い期間で開発できる太陽光発電を中心に導入量は急拡大していった。実際、2019年3月末時点の太陽光発電の累計導入量は4,954万9,000kWと、単純な出力換算ならば原子力発電所50基分まで普及した。ただ、FITはあくまで起爆剤で永続的な制度ではない。
政府は再生エネ電源を低コストかつ安定して電力供給できるようにする新たな支援策について、年内をメドに詳細を固める。
日本のESG投資残高が急拡大
国内外でESG(環境、社会、企業統治)投資が拡大している。拡大に伴い、さまざまなESG投資向け金融商品が生まれ、さらに活性化するという好循環が起きている。
世界のESG投資額を集計する国際組織GSIA(国際持続可能な投資連合)によると、2018年の世界のESG投資残高は30兆6,830 億米ドル(約3,323 兆円)となり、前回統計した16年の22兆8,900億米ドル(約2,479兆円)から34%増加した。
国・地域別にみると、日本はESG投資額が急増している。日本の18年ESG投資残高は2兆1,800億米ドル(約236兆円)と、16年の4,740億米ドル(約51兆円)から359.9%増と驚異的に伸びた。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が15年に国連責任投資原則(PRI)に署名し、17年からESG投資を開始したことが大きな要因のようだ。
また地域循環共生圏は、環境省が近年提唱しているキーワードだ。美しい自然景観などの地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完する。そのことで地域の活力を最大限に発揮できるようにする。