フロント/話題と人滝沢 秀一さん(お笑いコンビ 「マシンガンズ」)
2019年08月16日グローバルネット2019年8月号
漫画・エッセイ『ごみ清掃員の日常』がヒット中のお笑い芸人
もらった名刺には「ごみ清掃員・ごみ研究家」とあり、ご本人も「本業はごみ清掃員、副業は芸人」と言ってはばからない。
東京・足立区の出身で小さい頃から同じ区内出身のビートたけしさんに憧れ、学生時代は教員になるつもりだったが、在学中に「爆笑問題」(太田プロダクション)の漫才に衝撃を受け、お笑いの世界に入った。
マシンガンズという漫才コンビを組んでいるものの「売れない」貧しい生活が続き、36歳のとき、「嫁に40万円持って来いとすごまれ」、アルバイト代稼ぎのためごみ清掃の世界に飛び込んだという。
今年、6年間のごみ清掃員の日々を『ごみ清掃員の日常』(講談社、1,000円+税)と題する漫画・エッセイにして出版した。絵は、あの時おなかが大きくて出産費用を迫った妻・友紀さんが担当した。お二人の結婚記念日でもあるごみゼロの日の今年5月30日の出版以来、3万部に迫る勢いで売れている。
都内の清掃会社で清掃員として働く仲間は、俳優、声優、バンドマン、ボクサー、脚本家と多士済々。夢をかなえるため、ごみと格闘する人たちとの、ほのぼのとした交流やそれぞれの人生模様、ごみが語り掛ける世相や哀感のこもった住民の暮らしぶり、驚きのごみ捨ての実態などが、漫画を描くのは初めてという友紀さんの素朴な絵と滝沢さんの軽いタッチの文章とでユーモラスに描写されている。
滝沢さんは、文筆活動でのキャリアもあり、14年ほど前から年に1本は小説を書き、文学賞などに応募している。ホラー小説で受賞し、ある文学賞の3次審査まで残ったこともある。「又吉(直樹氏、2015年に芥川賞受賞)さんみたいに芥川賞が取れたらうれしいですね」と語るが、執筆は仕事の合間や二人の子供たちの就寝後、スマホに向かって文章を練るのだという。
今回の漫画のヒットで、ますます「本業」のごみ問題についての講演会や執筆の機会が増えたという。後輩芸人から「ごみ兄さん」などとからかわれることもあるが、「お笑い芸人を辞めるつもりはありません。お金があればお笑いを続けられる。もう意地かもしれません」と複雑な笑顔ものぞかせた。42歳。 (H)