環境条約シリーズ 328 日常生活に直結しているバーゼル条約プラごみ規制
2019年07月16日グローバルネット2019年7月号
前・上智大学教授 磯崎 博司
プラスチック(プラ)ごみによる海洋汚染が増大しており、それらの微細小片(マイクロプラスチック)は、魚介類からも見つかっている。この問題への国際関心は高く、2018年の主要7ヵ国(G7)首脳会議は「海洋プラスチック憲章」を採択した(日米は未署名)。2019年6月の主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議は、2050年までに新たな汚染をゼロにするための「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を採択した。東南アジア諸国連合首脳会議(同6月)も、海洋ごみ削減に関する「バンコク宣言」を採択した。
この問題の一因は先進国から開発途上国へ再生資源として輸出されるプラごみであるため、バーゼル条約も対応策を定めてきている(本誌2015年10月)。2019年5月に開かれたその第14回締約国会議においては、有害な特性を示すプラごみを附属書Ⅷ(有害廃棄物リスト)に追加するとともに、再生に適したプラごみを附属書Ⅸ(対象外リスト)に追加する改正が採択された。つまり、規制対象となるのは「汚れたプラごみ」であり、その輸出には輸入国の同意が必要とされる。それは2021年1月1日から適用される。
ところで、日本で排出されるプラごみは年間約900万tであり、そのうち約143万t(2017年)は再生資源として輸出された。しかし、大半を輸入していた中国が17年末に禁輸に転じた。18年は東南アジア諸国などへ約101万tを輸出したものの、それら諸国も輸入禁止や基準の厳格化に向けて動いている。他方で、バーゼル法の下では、輸入国における処分方法には日本国内と同等の水準が輸出要件として定められているが、そのような水準の開発途上国はない。
2021年からは汚れたプラごみの輸出は困難になるため、分別・再利用の徹底、プラ使用量の削減などが急務である。それに対応して、日本政府は、G20に先立ち19年5月には、使用済みプラ容器の再利用割合などを定めた「プラ資源循環戦略」を定め、また、レジ袋の有料化も検討している。このように、バーゼル条約の附属書改正は、日常生活にも直結している。