環境条約シリーズ 325パリ協定が定めた実施指針が採択されたUNFCCC COP24・CMA1-3
2019年04月15日グローバルネット2019年4月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
国連気候変動枠組条約のパリ協定は、第1回締約国会合(CMA1)での実施指針の採択を定めているが、2016年に開かれたCMA1までには準備できなかった。そのため、CMA1を延会にして、実施指針は同条約第24回締約国会議(COP24、2018年)に併せて開かれるCMA1の第3部(CMA1-3)で採択することにした。実施指針案の作成はパリ協定特別作業部会第1回会合(APA1)に委ねられ、第6部(APA1-6)まで検討会合が積み重ねられた(本誌2018年7月、9月)。
2018年10月には、ポーランド・クラクフでCOP24閣僚級準備会合が開かれ、実施指針の各項目(緩和、適応、透明性枠組み、資金など)の重要性は共有されたものの、詳細な点については意見の相違も見られた。また、今後の課題(電気自動車、大都市、エネルギー)についても検討された。
その後、12月2日から15日までポーランド・カトヴィツェにおいて、COP24、併せて、CMA1-3、京都議定書第14回締約国会合、APA1-7と第49回補助機関会合(SB49)が開催された。また、閣僚級会合やタラノア対話の政治会合も開かれた。
実施指針については、COPに先立ってAPA1-7・SB49が開かれ、APA・SB共同議長提案の修正・改訂が行われた。それを基にCOPの場で技術的な議論が行われ、政治解決が必要な論点については並行して閣僚級の交渉が行われた。最終的に、パリ協定の実施指針、閣僚級会合、実施と各国目標の引き上げ、IPCCの1.5℃特別報告書、タラノア対話、透明性枠組みなどに触れたCOP決定が採択され、その後、実施指針の各項目に関する一連のCMA決定が採択された。
その他、気候資金については、2020年目標(先進国全体で年間1,000億ドルの支援)に向けた進捗が確認され、また、資金支援情報に関する報告と評価の手続き、および、2025年以降の長期資金目標に関する検討・審議の日程が合意された。他方、閣僚級会合においては、シレジア宣言「連帯および公正な移行」が採択された。