フォーラム随想日々のトラブル
2019年04月15日グローバルネット2019年4月号
地球・人間環境フォーラム理事長
炭谷 茂(すみたに しげる)
1年くらい前に本欄で書類の整理について述べた。
いつも仕事をするために、資料を探そうとすると見つからない。時には半日もかかり、ストレスになっていた。
論文の執筆や講演の機会があると、全力で取り掛かる。専門にしているテーマは、医療、福祉、環境、人権の4分野であるので、収集している資料は膨大である。インターネットで検索できない資料こそ重要なので、保管し、すぐに取り出せることが必須だ。
このための対策としてそれぞれの資料を大きな封筒に入れて保管し、保管場所をパソコンに入力する方法を実践していると以前、紹介した。
これは効果が抜群で、資料を探す労力が軽減された。資料の存在がわかるので、紛失の心配がなく、ストレスがかからない。パソコンのデータを見れば、「こんなにたくさん資料を集めたか」と満足感に浸れることもよい。
たまたまインターネットを見ていたら、原爆被害問題を研究している元大学教授も、同様な方法を採用していると知った。元教授の保管されている資料は、莫大なのだろう。保管場所を自宅、事務所などに分散し、パソコンにデータを収めている。きっと私と同じように悩み、辿り着いた方法だろう。
しかし、日常のトラブルは、他にもいっぱいある。とくに年齢を重ねると、「老化現象の表れか?」と思うことがある。
先日、某所で講演をする機会があった。聴衆の反応がまずまずでほっとし、壇上から下りた。90分間の講演を終えると、いつも頭脳に相当の疲労感を感じ、ぼんやりする。この時も同様で、演台に時計を忘れてしまった。
私は、腕時計をしない。手首を締め付けられる感触が嫌いだし、ワイシャツの袖が擦り切れる。普段は100円ショップの腕時計をポケットに入れている。講演するときは、取り出して演台に置いて、時間を確認する。
今回もそのようにしたが、時計を置き忘れた。安価な時計だから、痛痒を感じないが、忘れてしまう自分に腹が立つ。
「注意力が落ちたなあ。これも老化現象か」と嘆息する。
貧困家庭で育ったから、物を大切にする習慣が身に付いている。だから物を置き忘れることは、ほとんどなかった。
急いだときや変わった動きがあったときに、物を忘れやすい。そこで今は、できるだけ余裕を持って行動し、確認に確認を重ねることにしている。
高齢者を狙ったオレオレ詐欺が伝えられる。最近は、強盗や殺人が伴う荒手の事件が発生する。
高齢者がかかってきた電話になぜ簡単にだまされるのか、誰もが不思議に思う。向こうは犯罪のプロで、高齢者の心理を読み切っている。
この類の電話を受けたことはないが、私もカモになるだろうから、いつも警戒している。電話は、いつも留守番電話にしている。怪しげな郵便物が送られてくるが、すべて無視、破棄する。わからない訪問客については、オートロックを開けない。
こんなことをすると、本当に用事があった場合が心配になるが、今のところ、問題は発生していない。
何かの場合に備えて、警察、役所、消費者センターなどの相談窓口を把握している。この種の問題の対処に精通している友人がいるので、ケースによっては相談しようと考えている。さらに自分で新しい法律の専門知識も常に習得に努めている。
日々のトラブルは、まだまだ尽きない。よく落とし物をするなどささいなことから法律問題になりかねない重大なものまである。これが人生で、高齢になれば、処理する能力は、落ちる。克服するためには、特別の新しい工夫が必要だ。良い方法がないものかといつも模索している。