特集/生物多様性の主流化は進んでいるのか~生物多様性条約COP14を終えて~生物多様性への配慮をビジネスに取り込んだ日本企業の事例
2019年02月19日グローバルネット2019年2月号
グローバルネット編集部
生物多様性への取り組みについて、日本の企業は欧州各国に比べ大きく遅れを取っている。とは言うものの、自社の事業に生物多様性への配慮を取り込んでいる企業もある。その事例を、生物多様性の保全を目指して行動する企業の集まりである「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」のパンフレットをもとに紹介する。
味の素株式会社
主要製品の一つである調味料「ほんだし」の原料であるカツオについて、2009年以来、水産研究・教育機構国際水産資源研究所と共同で、1万匹以上のカツオにタグを付けてカツオの遊泳行動を記録している。2011年からは、記録型電子標識(アーカイバルタグ)を使い、より詳細なデータを取得しており、その調査結果は中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)にも共有されている。
同社は紙・パルプなどの原材料の持続可能な調達のみでなく、生産現場の生態系の回復推進や自然資本に関するさまざまな研究も行っている。
イオン株式会社
2011年、より持続可能な調達を確保するためのガイドライン「イオンサステナビリティ基本方針」を制定。2014年以降、農産物、畜産物、水産物のほか、紙・パルプ・木材、パーム油について持続可能な調達方針が策定されている。
2015年にはMSCおよびASC認証魚のみを陳列する常設コーナー「Fish Baton(フィッシュバトン)」を設置。2018年2月末現在、62店舗がこのコーナーを常設しており、2020年までに、連結対象の総合スーパー、スーパーマーケット企業で、MSC、ASCの流通・加工認証(CoC)100%取得を目指している。
また、コンビニエンス事業のミニストップにおいては、2009年から国産のFSC認証材を活用した店舗展開を進めており、2018年2月末現在、251店舗がFSC認証材によって建設されている。
花王株式会社
2020年までに、花王グループの消費者向け製品に使用するパーム油は、持続可能性に配慮した製油・加工工場まで追跡可能なもののみを購入することを目指している。
また、2020年までのできる限り早い時期に、農園、サプライヤーおよび第三者機関との協働により、原産地の森林破壊ゼロを十分に確認することを目指し、2016年からはトレーサビリティ確認済みの工場に対して第三者機関によるリスク調査を実施している。ハイリスクと判断された工場に対しては専門家とともに現地調査を実施し、改善を要求してその経過を注視している。
さらに、2020年までに、自社の製品に使用する紙・パルプ、包装材料および事務用紙は、再生紙、または持続可能性に配慮したもののみを購入し、古紙パルプ以外のパルプ(バージンパルプ)を使用する場合は、原料木材産出地の追跡可能なパルプのみを購入することを目指している。2017年末時点で使用する紙・パルプの99.8%(うち、認証品86%)がこの基準を満たしている。2016年にFSC認証段ボールの導入を開始し、2017年にはグローバルで使用する段ボールの約80%を認証品に切り替え、2017年7月には衣料用粉末洗剤の本体箱およびふたにFSC認証紙を導入した。
株式会社ブリヂストン
病害は生産減少の主要要因の一つである。そこで、同社はパラゴムノキが被害を受ける根白腐病を簡単、迅速、正確に診断する画期的な病害診断技術を開発した。現在、同社はバイオ技術(LAMP法)を採用した診断技術の開発を手掛けている。この最先端の技術により、試薬キットを使えば病害によるバクテリアの有無を現地でも簡単かつ視覚的に確認することができる。被害の早期発見により、病害の感染拡大を防ぐことが可能になる。