フロント/話題と人サム・アネスリーさん(グリーンピース・ジャパン事務局長)
2019年02月19日グローバルネット2019年2月号
日本の一人ひとりの力を大きな力に変えたい
昨年12月に国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(GPJ)の新たな事務局長に就任した。18歳のとき、日本の豊かな自然と伝統的な文化に憧れ、岡山県内の高校に交換留学。その後、英国ケンブリッジ大学で日本語を専攻し、在学中は再び皇學館大学(三重県)に留学して神道学を学び、日本の言語・文化の知識を深めた。大学卒業後、2007年に再び来日し、三重県内の市役所や大学に勤務。その後、通訳ボランティアとして乗った国際交流NGO ピースボートの船での3ヵ月半の旅がその後の人生を変えた。市民運動の重要性に目覚め、そのままピースボートの職員に。さらにその後は国内外の遺児を経済的に支援する「あしなが育英会」や、英語による心理相談や情報提供を行う「東京英語いのちの電話」でも活動した。
英国領北アイルランド出身。高校生の頃、英国からの分離とアイルランドへの併合をめぐって続いていた紛争で同級生を失った。2011年の東日本大震災後は、宮城県石巻市に駆け付け、津波で破損した漁網の修繕作業に参加した。被災した地元の漁師と各国から集まったボランティアが黙々と復旧作業を続ける中、「生きている幸せは尊い」と実感し胸が熱くなったという。そんな経験から平和への思いは人一倍強い。
目下GPJが取り組む活動の中心は気候変動問題と海洋プラスチック問題。日本では過激な印象の強いグリーンピースだが、GPJの活動について、アネスリーさんは「個人でも取り組める行動の提案や、企業や自治体との対話・協働など、『市民と同じ目線』で進めていきたい」と言う。
「人が動けば社会が変わる。多くの人を巻き込んで、一人ひとりの力を大きな力に変えたい」。平和や命の尊さ、自然のありがたさ、そしてその調和を重んじる日本古来の考え方を深く理解しているアネスリーさん。日本のNGOでの豊富な経験も生かし、国内での活動への理解を深め、日本ならではの環境への取り組みを世界にいかに発信していくか。日本と世界の「橋渡し」としての手腕が期待される。
趣味は登山で、「日本の百名山制覇」が夢だという。36歳。(絵)