フロント/話題と人アイディル・フィトリさん(環境NGO「HaKI」)
2018年02月16日グローバルネット2018年2月号
争いではなく対話で森林減少の解決への糸口を探る
当フォーラムが主催した国際セミナー「森林火災とプランテーション」の講演者として1月に来日した。生まれ育ったインドネシア・スマトラ島は日本でも使われている紙の生産地であるが、その森林面積はこの30年間に約半分にまで激減している。主な原因は紙やパーム油の原料となるアカシア植林地やアブラヤシ・プランテーションの拡大だ。それらによる森林減少は、何千種もの生き物の生存を脅かし、そこに暮らす地域住民の生活にも大きな打撃を与えている。
土地の利用について、地域住民らは権利を主張するために必要な正式な書類を持っていなかったり、政府が地域住民からの了解なしに企業に許可を与えたりしていることが多く、時には住民と企業の間の衝突が激しくなり、死者やけが人も出ているケースがあるという。アイディルさんは「これでは森林伐採を止めることはおろか、地域住民により多くの被害を生みだしてしまう。冷静な話し合いで決着をつけるのが最も理想的かつ安全な方法」と語る。そこで、企業と地域住民らの間に入って話し合いの場を設け、地域住民らの権利を守るために活動しているのが、アイディルさんが所属する環境NGO「HaKI」(私たちの森研究所)だ。
違法に森林伐採を行う企業やそれらの企業に土地の許可を与えた政府の責任は当然だ。しかしそれらの企業から紙やパーム油を調達しているサプライヤーにも責任があることは軽視されがちだ。日本の多くの企業も紙やパーム油をインドネシアやマレーシアから輸入している。地域住民の土地利用権の侵害や強制労働などに調達先が関わっていないかなど、サプライチェーンで起きている問題について確認する試みは始まったばかりだ。アイディルさんは「持続的な原料調達のためにも、原料の調達ルートや現地の状況を再度確認してほしい。環境保全への貢献だけでなく、企業の今後の経営にも不可欠だ」とセミナーで訴えた。
アイディルさんには幼い子供が3人いる。「子供たちも自分のように豊かな自然環境でのびのびと育ってほしい」と語る。将来の子供たちに豊かな森を残すため、今後も地域で活動を続けながら、世界各国の企業に対して企業活動を続けていくためには環境保全は不可欠だということを訴えていきたいという。