フロント/話題と人梶原 誠さん(WAcKA代表)
2018年01月16日グローバルネット2018年1月号
廃棄Tシャツから作る手芸糸でつなぐ、環境循環と共感の輪梶
環境省主催の「第5 回グッドライフアワード」で環境と福祉賞を会社設立初年度に受賞したのがWAcKA(わっか)。廃棄されるT シャツや端切れから編み物に使う手芸糸(Tシャツヤーン)を作り販売している。商品の「iTTo(糸)」は国内で廃棄される素材を使い、お菓子のようなきれいなグラデーション色は、代表の梶原さん自らが染めている。
梶原さんは、日本のアパレル企業から派遣され中国、ベトナムなどでの勤務を経て、2016 年の夏まではバングラデシュで立ち上げから関わった駐在員事務所で現地工場の管理をしていた。日本に一時帰国中に会社で、問題なく見えるT シャツが返品され、そのまま廃棄されている現状を目の当たりにした。バングラデシュでの4 年間の勤務で経験した低賃金で空調もない過酷な生産現場で働く労働者の状況と、大量生産・大量廃棄を推進する繊維産業との矛盾が膨らみ、退職を決意し、2017 年1 月に起業した。
梶原さんの取り組みは、近江商人の「三方よし」のように多方面への広がりが特徴的だ。環境面では、廃棄される衣料品を回収再利用。社会・福祉の面では、作業の一部を千葉県八千代市の社会福祉協議会を通じて、地域の高齢者や就労移行が必要な人に委託している。これによりコミュニケーションの場と就労移行につながる機会を提供。また、茨城県常総市の心身障害者施設に身近なフェアトレードとして適正な工賃での作業依頼を心掛けている。さらに製品となった糸を使って編み物ワークショップを開催。編み物が得意なお年寄りが先生となり、若い世代に教える。これがきっかけで自ら編み物教室を始めるほど元気になった70代の女性もいるという。
「服を買うときにその環境負荷や労働者の労働状況にまで思いをはせる人はほとんどいません。製品を購入すること、編み物を楽しむことで知らないうちに良いことに貢献しているという状況を作れれば」と抱負を語ってくれた梶原さん。
若いときは海外への憧れから英語を勉強し、海外勤務をしてきたが、今は地元に根差した活動に注力している。新しい資源を使わない「ごみから作るファッション」、「廃棄食品から作った染料の利用」など、チャレンジしたいことはたくさんある。 (亜)