環境の本・林ヲ営ム~木の価値を高める技術と経営
・ESG投資 新しい資本主義のかたち
2017年11月15日グローバルネット2017年11月号
林ヲ営ム―木の価値を高める技術と経営
著●赤堀 楠男
手入れも利用もされず疲弊が進む日本の森を元気にすることは、国の重要な政策と位置付けられて久しい。最新の森林・林業基本計画では、資源の循環利用による林業の成長産業化や木材産業の競争力の強化などにより2025年までに木材自給率を50%まで引き上げる目標を掲げている。
本書は、日本の林業を元気にするための方策を、各地の林業家への尊敬と愛情にあふれる丁寧な取材をもとに説いている。「少しでも高く売れる木を育てる。その木を使われるようなマーケットをつくる。そんな『足し算』、あるいは『掛け算』にもつながるような取り組み」の事例が、わかりやすい形で書かれている。山の手入れは隣り合った山でも異なるほど、各地の自然や人によって多様なものであることに改めて驚かされる一冊。
農山漁村文化協会、2,000円+税
ESG投資―新しい資本主義のかたち
著●水口 剛
著者は責任投資の分野の第一人者であるが、2015年4月から1年ほどロンドンに滞在し、ESG投資の本場である欧州に身を置いた。欧州がESG投資に熱心なのはその背景に「危機感」があるという。「破局を避けて、持続可能な経済を築きたいと思うなら、環境や社会の側面をきちんと考慮する経済システムを作る必要」があり、そのための一つの手段がESG投資、と説く。
本書では世界と日本のESG投資の現状と動向とともに、人権問題、森林問題、水産業、動物の福祉、クラスター爆弾など具体的なESG課題についても解説されている。ESG投資の主流化、またその「質」が問われてくる中で、最新動向を学ぶには最適の1冊。
日本経済新聞出版社、2,200円+税