フロント/話題と人害獣として駆除されたイノシシの革を使ってかっこいい靴を作る~職人の地位向上を目指して全国を飛び回る
2017年11月15日グローバルネット2017年11月号
花田 優一さん (人気者の靴職人)
元横綱・貴乃花の息子でイケメンの靴職人、というだけで世間の耳目を集めるのに十分だが、22歳で礼儀正しく、靴のことを語らせたら目を輝かせ、夢多きロマンチストでもある花田さんは、今やテレビ、ラジオでひっぱりだこ。
当然、多忙な毎日だが、9月に東京・大手町で開かれた、野生動物の革の利用拡大を呼び掛けるMATAGIプロジェクト実行委員会(当財団に事務局)主催のシンポジウムに姿を見せ、イノシシの革で作った靴を披露しながら、「職人の地位を上げるためなら、僕は何でもやりますから、どんどん使ってください」とあいさつし、小さなNGOが進めている活動にエールを送った。
花田さんは、「厳しい父親から逃れるように」中学を卒業すると米国に留学。さらに、ものづくりの大切さを知るためにイタリア・フィレンツェの靴工房で約3年間の修行をした。スリムな体形から、もともと角界に入るつもりはなかったそうだが、地味で斜陽ともいわれる靴づくりに情熱を注ぐ孤高な姿に多くの人たちが感動している。
お笑いタレント明石家さんまさんが司会をする人気番組で今春、花田さん手作りの靴がさんまさんにプレゼントされた。「波を表現した」という紺色の革を使ったスマートな靴にさんまさんもすっかり気に入ったそうだが、その時の花田さんの思慮深い語りや人柄、靴の出来栄えにネット上で感嘆の声が飛び交った。
シンポジウムに参加した日の自身のブログでは「害獣として駆除されたイノシシの革で作った靴です。革も発展途上、靴も発展途上。この革でもっとかっこいい靴を作るため、研究します!!!!」。会場では、ボランティアで手伝っていた女子大生と気さくに写真撮影に応じていたが、「若い人たちがものづくりの世界に関わってくれることは幸せで、感謝です。もっともっとたくさんの若者たちに憧れてもらえる職人にならなくては」と、人気者らしからぬ謙虚な姿勢を崩さない。職人の地位を向上させるのが夢だ。(H)