フォーラム随想病気の2大原因
2017年10月16日グローバルネット2017年10月号
地球・人間環境フォーラム理事長
炭谷 茂(すみたに しげる)
病気の2大原因は、生活習慣の乱れとストレスである。二つとも思い当たることがいっぱいある。
60歳までは、「精神力さえあれば」とか、「ここはガッツで勝負だ」と無謀な生活をしていた。平日の夜は、10時過ぎまで職場で仕事か、酒を飲みながら友人、知人と話をしていることが多かった。楽しくもあったし、有益だったので、苦痛ではなかった。
週末になると、スラムなどの環境の劣悪な地域や障害者への援助などの活動をしていた。
その頃、顔色がよほど悪かったのだろうか。人と会うたびに「健康は、大丈夫?」とよく聞かれた。もともと体力には自信がなかったが、幸運なことに病気で休んだことはほとんどなかった。60歳まで医療を受けたのは、16歳の時に虫垂炎になったとき(この時も抗生物質を2~3日服用しただけで、休むことはなかった)と虫歯治療だけだった。
実際は、無理を重ねていたのだろう。その頃のツケを現在払っている。生活習慣の乱れは、いつか体に出てくるものだ。
そのことを私の年齢になってから、ようやく気付く。私の周りでは、若いころ乱れた生活を送っていた人は、病気になっている。学生時代の同級生にフィリピンで飲食店を独力で立ち上げて財を成した男がいた。がむしゃらに働き、がむしゃらに遊んでいた。しかし、これからというときに亡くなった。太く充実した人生だったが……。
今は、私は、健康生活の模範生である。食事、運動、休養の健康の3要素を厳格に守っている。健診データは、努力が忠実に反映する。習慣になれば、こんな簡単なことはない。「早くやっていれば」と悔やんでも後の祭りだ。
もう一つの健康の敵であるストレスは、対処の仕方がより厄介だ。
ストレスのない生活を送ることはできない。ストレスを避けていては、良い仕事はできない。凧は、逆風で舞い上がる。
私は、生来、ストレスに強い方ではない。小学生のころは、人前で発表するのが苦手で、心臓がドキドキし、足が震えた。
同じ年齢で物おじせず、饒舌を振るう子がクラスにいた。学業もスポーツもでき、クラスの人気者だった。
「どうしたらあのように堂々としていられるのか」とうらやましかった。たぶん、これは生まれつきの性格によるのだろう。しかし、今から思うと、早熟なだけだった。実社会では役に立つ肚があったわけではない。
ストレスに対する耐性は、社会経験を積むにしたがって養われるものだ。10代での貧困生活は、その後いろいろな場面で「あの時に比べれば」と腹がくくれた。きっと腹の据わった人は、私と比較できない艱難辛苦を経験しているのだろう。
役人の中に脅しを交渉の手段に多用する人がいた。こんな人は、社会経験が薄っぺらで、私から見ると「よい大人が……」と哀れさを感じた。
困難な仕事ほど多くの敵を作る。逆に反対する勢力のない仕事は、取るに足りない。反対の多い仕事を好んで挑戦することに人生の意義を感じてきた。「首にしてやる」と脅されることがあったが、ささいなことで、不感症になっていた。相手は、いつも拍子抜けだ。
これまで仕事に絡むことでの暴行未遂は、1回だけ中国地方の某都市で受けた。これは事前に自宅に電話で「ここへ来るのをやめろ」と暗い声で脅すように言ってきた。現地の人は、警戒してくれた。この事件以降、本を入れた大きなかばんを持ち歩くことが習慣になった。ナイフ程度であれば、防御に役立つかも……。時々「どこか旅行に?」と聞かれる。
その他ストレスの原因は、仕事以外にも人間関係、病気、お金と尽きない。ストレスへの対処の基本は、正面から戦うという正攻法だが、つまらない問題は、避けて気にしないことも、一つのやり方だと思っている。