環境の本・国立公園論―国立公園の80年を問う-
・経済学が世界を殺す~成長の限界を無視した倫理なき資本主義~

2017年05月15日グローバルネット2017年5月号

国立公園論 ―国立公園の80年を問う-

編●国立公園研究会・自然公園財団

国立公園の在り方を考えるため、環境省のレンジャー(自然系職員)OBを中心に、2013年から進められた国立公園研究会の議論と、それをベースに月刊『國立公園』に16年まで掲載された連載をまとめた力作。文責の阿部宗広・自然公園財団専務理事、小野寺浩・屋久島環境文化財団理事長共同の前書きに「行政の経験者はついついバランスを第一に考えてしまう。国立公園研究会で強く意識されたのは、そうした役人的バランス感覚よりも、新しい提案、鋭い指摘をすることであった。役所のペーパーではなく、学術論文でもない。たとえ一行でもいいから、これまで誰も言っていない斬新なことを言おうと試みること。その企画意図はそれなりに実現できた」とあるように、多角的視点からの検証、提言がなされており、大変読み応えがある。(南方新社、1,800円+税)

 


経済学が世界を殺す ~成長の限界を無視した倫理なき資本主義~

著●谷口 正次

「21世紀に生きる私たちは、資源と環境の限界に直面した人類最初の世代です。『主流派』と言われる経済学者たちは、それをまったく無視し続け、知って知らぬふり」。本の題名も前書きにも、激しい言葉が散りばめられている。筆者は資源・環境ジャーナリストとして活躍しているが、鉱山技術者として世界中の鉱物資源採掘現場を歩いてきた元大手セメント会社の専務取締役も務めた人物。

退職後は国際日本文化センターの研究員、千葉大学、京都大学などで教壇に立ち、現場で目の当たりにした資源収奪の現実を語り続けている。

絵画を愛し、先住民文化にも造詣の深い教養人だが、著作の中では胸にたまったマグマが爆発するように、主流派経済学の批判をしている。行き詰まるグローバル経済の「解」を見出すためにもぜひ読みたい一冊。(扶桑社新書、800円+税)

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