環境条約シリーズ302有害廃棄物の取引増加とバーゼル法の改正
2017年05月15日グローバルネット2017年5月号
前・上智大学教授
磯崎 博司
有害廃棄物については、当初は、先進国から開発途上国への公害輸出の防止が課題であった。近年は、開発途上国での発生が増え、また、再利用・再資源化・適正処理のための国際的な循環ネットワークが形成されており、そのネットワーク全体での悪影響の低減と安全性の確保が課題となっている。それに応えて、バーゼル条約においては、有害廃棄物の環境上適正な管理に関する枠組みとともに、POPs廃棄物や水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する各種技術指針、また、電気電子機器廃棄物および使用済み電気電子機器の越境移動に関する技術指針が整備されてきた(本誌2011年11月、13年7月、15年10月)。
日本においても、有害廃棄物の輸出・輸入は増加している。それに伴い、一方で、雑品スクラップの不適正輸出、輸出先国からの不法取引との通報(積戻し要請)、また、使用済み鉛蓄電池の輸出先での環境上不適正な取り扱いなどが増えている。他方で、比較的有害性が低く有用な金属を含んでいる廃電子基板などは輸入ニーズが高く、ヨーロッパ諸国との国際的な獲得競争が激化している。そのため、日本の事業者は、競争上不利となる輸入規制の緩和を求めている。
このような、国際的な状況の変化やバーゼル条約による関連指針の採択・更新を受けて、同条約に対応するバーゼル法の改正案が今年3月10日に国会に提出された。それによれば、輸出先国において条約上の有害廃棄物と認定されている物のうち環境省令が定めたものは、外国為替・外国貿易法の下の輸出承認が義務付けられる「特定有害廃棄物等」に追加される。また、その承認の際に、輸出先の環境汚染防止措置について環境大臣が確認する事項は、環境省令で明示される。
他方で、再生利用に適した廃電子基板などの開発途上国からの輸入については、輸入事業者および再生利用事業者の認定制度が創設される。その認定再生利用事業者による再生利用のために、認定輸入事業者が特定有害廃棄物等の輸入を行う場合は、外国為替・外国貿易法の下の輸入承認は不要とされる。