環境の本・狩猟採集民からみた地球環境史自然・隣人・文明との共生
2017年04月15日グローバルネット2017年4月号
狩猟採集民からみた地球環境史
自然・隣人・文明との共生
編●池谷 和信
本書は、多岐にわたる学問分野に細分化されている世界の狩猟採集民の研究を統合し、都市文明中心ではなく狩猟採集民の視点からの世界史を地球環境史として構築することを試みている。
カメルーンで自然保護団体が進めた森林保全プロジェクトにより、狩猟採集民の森林利用実態とかけ離れた規制が敷かれ、生活が厳しく制限された事例や、マレーシアの狩猟採集民が森林伐採に対抗するため生活形態を変化させている事例は興味深い。
熱帯林で暮らす人々は、開発や森林伐採などの圧力を受け、遊動生活から定住へ、狩猟採集から農耕へと生活の変換を強いられた社会的弱者である。しかし、先住民族の文化や伝統的知識、彼らの一部が持つ平等主義や所有に対する概念に学ぶところは多いと感じられた。(東京大学出版会、5,800円+税)