世界のこんなところで頑張っている ~公益信託地球環境日本基金が応援する環境団体第13回/カンボジアの小中学校での植樹活動と環境教育
2016年01月15日グローバルネット2016年1月号
ワールド・アシスタンス・フォー・カンボジア・アンド・ジャパン・リリーフ・フォー・カンボジア
櫻井 美穂(さくらい みほ)
1993年に設立され、カンボジアの人びとのため、教育、保健衛生、農村開発、技術分野を援助している団体です。主たる活動として、カンボジア23州全域にカンボジア政府と連携し、公立の小中高校556校の校舎を建設し寄贈しました。現在それらの学校には、年間約11万人の生徒が通っています。地球環境日本基金から2013年より受けている助成金では、プレイベン州・スバイリエング州・コンポンチュナング州に当団体で開校した小中学校および村での植林活動と環境教育を行っています。
環境教育の必要性
1960年代国土の70%以上あったといわれる豊かな森林は、農地や宅地への転換、生活燃料、道路工事などのための伐採により面積が減少しています。近年経済発展しているカンボジアですが、それは都市部に限ったことで、農村地域では、いまだ電気・水道・ガスなど生活インフラが整っていません。農業が主な産業で、人びとは自給自足に近い生活を送っています。子供の数も多く、農村部では人口は増え続けています。農地の拡大や家を作るため、木を切り開拓し、柵を作ったり、木炭や木を生活燃料として使用し、樹木は今後も減少していくことが予測されます。人びとの環境意識の欠如も一因です。
そこでカンボジアの学校の授業では、通常行われていない環境教育を、カンボジア語で作成した教材を提供し、現地の教師と協働で行っています(写真①)。
子供たちは温暖化・自然破壊についてやその原因、さらに二酸化炭素(CO2)削減の必要性を学びます。その上で、木を植え、自分自身の食べ物を育てる経験をし、無農薬の推奨など環境を大切にすることを学ぶことをねらいとしています。生徒数が多く教室が足りないため、多くの学校は午前・午後の2部制をとっています。私たちの訪問日や時間によっては、参加できない生徒もいます。そのため掲示物を作成したり、ほかの教科の中でも環境教育を行ってもらうなど、現地の教師および学校と連携し環境の啓蒙に取り組んでいます。環境教育のプログラムに、2013~2014年度で34校の生徒2,615人が参加しました。
植樹活動
対象校は、無電化で自給自足に近い生活を送っている、とくに貧しい村の学校を選定しました。生徒や教師も非常に興味を持ってくれています。環境教育の授業の後、各生徒に暑さに強く、育てやすいマンゴーや地域の土地に合ったオレンジ、ロンガンなどの果樹の苗木を配布し、各自の家で育ててもらいます(写真②)。
3年程度で初めの果物が実ります。村の人びとにも苗木の提供を行っています。村人は、昼間は農作業や家事で忙しく、口伝えでは集まりが悪かったため、お昼の時間や、村に出向いて苗木を渡すようにしたり、村長に協力してもらったりしました。村には苗木などの販売所はないので、私たちは苗木や材料のほとんどを首都プノンペンで購入し、運んでいます。村人にとっては高価なものなので、苗木の提供は大変喜ばれ、大切に家に持ち帰り育ててくれています。2013年度は3,800本、2014年度は7,040本を植樹しました。
しかし、苗は7~10月までの雨季による洪水や3~4月の猛暑により枯れてしまうことが多いです。灌漑施設や水道がなく、井戸も乏しく、雨水に頼る農法であるため、雨季が始まる5~6月が植樹に適しています。子どもたちには、雨季の前までは、家で水やりをして苗木を大きくし、雨季が始まったら植樹するように伝えています。
季節や地域の土の特性などに合わせ、苗木の選定・入手の準備・開始・管理を行うことが非常に重要です。また、フォローアップがないと、材料がないため行動に移せず、植樹を継続することができません。一定期間は定期的に村を訪問し、苗木の追加や、園芸容器など村で入手しにくいものを継続的に用意し、提供する必要があります。
苗木づくりとCO2削減および食料事情の向上
果樹の提供と同時に、自生するモリンガ(和名ワサビノキ)を種から苗木に育てることにも取り組んでいます(写真③)。種と園芸容器を各生徒に渡し、苗木を家庭で育ててもらい、15~20㎝程度に育ったら、自宅に植え、多く出来た場合学校に持ってきます。そして学校に植えたり、他の生徒や村の人に育てた苗木をあげます。2年間で4,150人が行いました。モリンガはCO2の吸収率が他の植物に比べても非常に高く、栄養価にも大変優れています。乾燥に強く成長が早く育てやすく、1年で1~2m成長します。葉は食用で、8ヵ月程度で食べられます。乾季の野菜が不足している時期にも食べることができます。
私たちは授業でモリンガの効用を知ってもらい、自分で育て、必要な栄養素を補うため、毎日100枚の葉を食べるように伝えています。効能の高い樹木であるモリンガは、1~2年で種が採取できるため、学校や村で、今後さらに苗木を作り、村全体で木を植える活動を継続していきたいと考えています。
2年間の活動を通じ、学校や村から感謝され、好評です。学校もとても協力的で、全校の行事として設定してくれる学校もあります。この活動によって、初めて自分の木を持つという生徒が多くいました。苗木の提供のほか、10校には図書や学用品を寄贈し、浄水器を設置、6校で井戸を修理、3校で校庭に日除けとテーブルセットを提供しました。この活動の二次的効果として、校庭に小さな学校菜園や、苗木を作成する場所を作ったり、校庭に植樹する木には囲いを作ったりというような自主的な取り組みもありました。教室に浄水器を設置したことで、衛生的な水を飲めることが出来るようになり、その使用促進を教師は行っています。村では、モリンガの葉を週に何回か家の前で売る児童の母親や、自分も植えたいので種がほしいと学校の先生に聞きにくる住民もいます。
地球環境日本基金からの助成金により、多くの生徒や住民に直接支援が出来る活動を行うことが出来ています。今後も環境を守る意識を持ち、1本でも多くの木を植えていく活動を続けていきたいと思っています。