環境条約シリーズ289第8回日米渡り鳥条約会議と第10回日ロ渡り鳥条約会議の開催
2016年04月15日グローバルネット2016年4月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
日米渡り鳥条約の第8回会議が2015年11月17日に、また、日ロ渡り鳥条約の第10回会議が同18日に、アメリカ・フォールズチャーチで開催された(本誌2006年5月)。
日米渡り鳥条約会議においては、その付表(日米間の渡り鳥リスト)の改正に向けて、両国の最新の鳥類目録に基づいて作業を行うこととされた。また、アホウドリについては、全体の個体数が年率7~9%で増加し続けていることを受けて、その衛星追跡調査を終了することが決定された。風力発電については、両国においてその導入が促進されているため、とくに増加しつつある洋上施設への対策として、特別に注意すべき海域の指定、海鳥に関する脆弱性指標の作成、ブレードの彩色や警戒音による防止策、実施可能で具体的なバードストライク防止策に関する手引きの作成などが決められた。鳥インフルエンザについては、その伝播メカニズムの解明、ウィルスの分離・遺伝解析、リスク評価などを行うことが決められ、他方で、西ナイル熱については、アメリカにおける野鳥への感染の拡大が報告された。なお、北極評議会の動植物保全作業部会の下での北極渡り鳥イニシアティブ(AMBI)による保全活動に日本が参画するよう、アメリカから期待が表明された。
日ロ渡り鳥条約会議においては、陸生鳥類のうちシマアオジについて、カムチャツカ半島の複数地点において近年急減していることが報告された。また、シギ・チドリ類のうちヘラシギに関しては、この40年間で個体数が約10%に減少していると報告された。日ロ間で優先度の高い種としては、ハクガン、カリガネ、トモエガモ;ヘラシギ、ハマシギ;海鳥;オオワシ、オジロワシ;シマアオジ、カシラダカ、オオジュリンが選定された。他方、ロシアより、海鳥の保護に関して、混獲防止策の改定および排他的経済水域内での流し網漁の規制について報告があった。また、AMBIについては、ロシアからも、その保全活動に日本が参画することへの期待が表明された。