特集/シンポジウム地域から考える気候変動問題 in 三重~伊勢志摩サミットに向けて</small>気候変動問題の最新の動向について
2016年05月15日グローバルネット2016年5月号
特集/シンポジウム 地域から考える気候変動問題 in 三重 ~伊勢志摩サミットに向けて
近年、世界中で気候変動の影響が現れています。しかし今後どのような温暖化対策を取ったとしても温暖化は進み、それにつれて、自然災害、農業、自然生態系、健康などさまざまな面で深刻な影響が生じる恐れがあります。気候変動問題に関する最新の動向を紹介し、これらの情報をいかに伝え、今後どのような対策を進めていくべきかを考えるシンポジウムが、伊勢島サミットを5月末に控える三重県鳥羽市で3月18日に開催されました(主催:環境省、共催:三重県)。講演とパネルディスカッションの内容を紹介します。
環境省地球環境局気候変動適応室 室長補佐
藤井 進太郎(ふじい しんたろう)さん
昨年末、フランス・パリにおいて気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開かれ、12月12日にパリ協定が採択されました。1997年に採択された京都議定書は先進国だけが削減義務を負うものでしたが、パリ協定はこれに代わり、すべての締約国が参加する、2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際的な枠組みとなりました。
COP21のもう一つの成果 市民社会などへのメッセージ
COP21決定では、市民社会や民間セクター、金融機関、都市その他地方公共団体
など、すべての非政府主体の努力を歓迎し、そのスケールアップを招請しています。そして国内政策やカーボン・プライシングを含め、排出削減にインセンティブを与えることの重要性を認識しています。
さらに、会期中は産業界や自治体、市民社会などが世界の低炭素化や低炭素投資へのメッセージを発信しました。つまりCOP21の成果はビジネスチャンスとして捉えられているのです。
また、海外では、すでに金融機関や機関投資家などが、気候変動が企業価値に影響を与えるリスクを評価し、投融資活動に反映する動きが見られます。中期的な投資リスクを回避する、などの観点から、企業の環境配慮などの要素を考慮して投資を行う「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」が世界的に急速に拡大しています。世界のESG投資運用額は2012年の13.3兆米ドルから2014年の21.4兆米ドルに、61%増加しており、とくにヨーロッパでは世界の総投資額の63.7%(13.6兆米ドル)がESG投資により運用されています。
日本では、金融機関が「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」を2011年10月に採択し、昨年末時点で署名した金融機関は195機関にのぼります。さらに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年9月、資産運用においてESGの視点を反映させる責任投資原則の署名機関となりました。
しかし地域別のESG投資運用額を見れば、アジアの占める割合は世界のわずか0.2%です。今後はアジアにおいても低炭素投資の拡大が期待されます。
日本の温暖化対策に関する当面の課題と新たな国民運動の展開
日本における地球温暖化対策に関する当面の課題は四つあります。①パリ協定の早期署名と締結、実施に向けた取り組みを進めていきます。そして、②地球温暖化対策計画・政府実行計画を策定・実施し、③我が国として初めて策定した「気候変動影響への適応計画」(昨年11月27日に閣議決定)を着実に実施し、④2050年、さらにその先を見据えた長期的・戦略的な低炭素戦略についても検討に着手していきたいと考えています。
わが国は、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという目標を掲げています。この目標を達成するため、総理主導で、政府一丸となって「COOL CHOICE」を旗印に国民運動を進めていこうとしています。日本が世界に誇る省エネ・低炭素型の製品・サービス・行動などについて、温暖化対策に資するあらゆる「賢い選択」を促していきます。
環境省では2014年から、豊かな低炭素社会づくりに向けた知恵や技術をみんなで共有し、発信していこうという気候変動キャンペーン「Fun to Share」を展開していますが、「COOL CHOICE」では、そこで共有・発信された知恵や技術に加え、エコカーを買う、エコ住宅を建てる、エコ家電にするなどの「選択」、高効率な照明に替える、公共交通機関を利用するなどの「選択」、そしてクールビズをはじめ、低炭素な行動を習慣的に実践するというライフスタイルの「選択」を促します。
皆が一丸となって温暖化防止のための賢い選択を積極的に行えるよう、統一のロゴマークを設定しました(下図)。これを活用して、政府・産業界・労働界・自治体・NPOなどが連携して、広く国民に呼び掛けて行きます。