フロント/話題と人マーガレット・スプリングさん米国・モントレーベイ水族館 副館長
2016年12月15日グローバルネット2016年12月号
水族館が消費者とともに取り組むシーフード保全
サバとスズキは「最良」の緑、ホタテは「より良い選択」の黄色、クロマグロやハマチは「回避」で赤など、ポケットサイズの消費者向けガイド「シーフード・ウォッチ・すし版」では、海の環境に配慮するならどの魚を選ぶべきかが一目でわかる。米国では1996年に「持続可能な漁業法」が制定され、乱獲や生息地の破壊など魚をめぐる問題が注目を浴びた。スプリングさんが2013年から副館長を務めるカリフォルニア州のモントレーベイ水族館(MBA)では、15年前からこのガイドの作成を始め、国内各地の動物園、水族館、レストランなどで年160万部を配布し、スマホアプリもある。ガイドを手にした人が店で「持続可能な魚はありますか?」と聞くことで、業界の関心を高めることにつながってきたという。MBAでは持続可能な魚の供給に取り組むビジネスパートナーを募っており、米国の主要な食品小売業者が参加している。日本の水族館ではなかなか見られない取り組みだ。
米国は水産物消費の90%を輸入が占めるが、MBAでは東南アジアをはじめ、他国での持続可能な漁業基準の作成にも協力している。養殖エビの生産者や関連する養殖認証機関が基準を修正し、より持続可能な生産に取り組むようになるなど「生産地での大きな変化に結び付いた」例もある。
スプリングさんは、環境問題に関わる弁護士だったがその後、NGOや政府など長年さまざまな立場から海洋の環境問題に携わってきた。今回は違法・無規制・無報告(IUU)漁業に関するセミナーの講師として来日。日本は「世界の水産資源、とくに公海での意思決定において重要な役割を担い、科学的な力量、地域による資源管理の伝統がある。一方で資源管理政策や取り組みは、米国の1960年代に近い」と指摘する。資源管理は、科学的情報を基盤としつつ予防原則に基づき判断することが重要だが、科学者は保守的な立場をとりがちだ。そのためオープンな議論が不可欠という。
日本の課題は目標設定を明確にして透明性を高めること。「将来に向け持続可能性を担保することが、漁業者や供給者を支えることになるはず」とエールを送ってくれた。(ぬ)