NSCニュース No. 154 2025年3月定例勉強会報告「PFAS汚染に企業はどう取り組んでいくか」

2025年03月14日グローバルネット2025年3月号

NSC幹事
(株)環境管理センター基盤整備・研究開発室チーフ
青木 玲子(あおき れいこ)

PFAS対策の最新国内外動向や技術の事例紹介、汚染問題への企業のリスク対応へ提案を頂いた(2/19開催)。

PFAS汚染について企業に何ができるのか~コンソーシアムの活動と最新技術の強化について

PFAS対策技術コンソーシアム事務局会長/産業技術総合研究所 山下 信義氏

*海外ではPFAS対策技術は社会システムに組み込まれている。米国はスーパーファンド法で処理促進、欧州は世銀やUNEPによる技術普及、中国は脱PFAS進行、ベトナムやタイは政府がPFASフリー産業を推進、ベルギーはPFAS除去後土壌が再利用されている。

*PFAS発生源特定に多成分分析技術やマスバランス(総フッ素中の有機フッ素と個別PFAS寄与率)解析が必要。

*PFASは難分解で、製品リサイクル過程にも存在し、地下水/雨水/ダストへ移動、ガスや粒子状での大気経由や二次生成を含めて直接間接に人に曝露することから濃度規制では実効性が低いため、絶対量での総量規制が必要。

*国内PFAS対策の問題は国内産業界の問題であり、以下4点が課題。

    1. 発生源特定に必要な多成分分析技術が未普及のため、技術確保には自社でのラボ設置も含めた検討余地あり。
    2. 川上と川下で情報が未共有。
    3. 製造時の非意図的な二次生成、川上からの不純物質や添加剤もEUでは規制対象のため、自社で使用する化学物質以外も見る必要がある。ECHAのPFAS規制は今後のラベリング規制(全ての有害物質の含有量を明記する)の始まりに過ぎない。
    4. 海外のPFAS対策の論文や現場を経営者が自分の目で見る必要がある。

*欧州電子機器工業会ではPFAS対策はコストの問題はあるが技術的には対応可能としている。高価なPFASフリー製品か、安い製品で利便性優先かの資本主義マーケティングの課題である。

イオン交換樹脂を用いたPFAS除去技術の紹介

室町ケミカル㈱ 古田 絢裟氏

 イオン交換樹脂でのPFAS除去は水中での陰イオン交換反応と樹脂母体の炭素鎖の疎水性結合で強固に吸着させる仕組み。活性炭と比較して広範なPFAS類を選択的に吸着可能で吸着容量が数倍あり、強固な吸着で脱離しにくく、使用量や設備面積が抑制可能。
 PFAS濃度が低い処理系統では他法よりも最も低コストと評価される。親和性を示す分配係数試験で活性炭よりも良好な吸着性能を持つ。高濃度での加速通液によるライフ試験からも活性炭より多くのPFASを吸着可能と確認。環境水では数年単位のPFAS除去可能。

3次元統合型水循環シミュレータGETFLOWSを活用した表流水・地下水へのPFAS拡散実態把握/推定及び将来予測

㈱地圏環境テクノロジー 光永 修氏

 PFAS汚染の実態把握や将来予測可能な技術の紹介。ソフトウェア世界4強の中で唯一、PFAS拡散計算で重要な溶解や揮発を扱える解析ツールである。工場等の局所から地域や全球までの広域、高解像度の3Dにより、短期長期問わずに表流水と地下水の一体で拡散解析可能。多摩地区でのPFAS汚染源を解析した地下水可視化動画をNHKの報道番組へ提供した。
 国土水循環モデルで開発した国土情報プラットフォームで全国データ公開中。解析結果を用いてPFAS汚染対策工法の比較検証や最適案選定の提言可能。

PFASに関するリスクコミュニケーションのあり方に関する考察

㈱環境管理センター 青木 玲子

 PFAS問題では市民や消費者のリスクに応じた行動選択のため、汚染実態/健康リスク/曝露防止策/被害予防策等の知見や関係事業者からの情報開示が必要。国内の汚染源は多く未解明で浄化対策が待たれる。海外は規制強化が進み、業界単位での脱PFASも進む。国内では市民・業界団体・学会の情報発信の先進取組がある。規制を待たない事業者の自主取組と開示による企業価値維持向上への対応と対話が重要。

進行まとめ

NSC勉強会担当幹事 川村 雅彦

 従来の重金属やVOCによる土壌汚染問題にPFASも含めた対応が望まれる。

全体講評

NSC共同代表幹事 八木 裕之

 規制対応以前に市場で製品選択される信頼性の高いPFAS情報をバリューチェーン全体で企業が共有し、地域も含めたエンゲージメントが必要。

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