NSCニュース No. 153 2025年1月定例勉強会報告 新たな経済に転換するサーキュラーエコノミーをいかに企業価値につなげるか
2025年01月17日グローバルネット2025年1月号
NSC幹事
(株)環境管理センター基盤整備・研究開発室チーフ
青木 玲子(あおき れいこ)
サーキュラーエコノミー(以下、CE)への変革を企業価値につなげる役割の指標開発動向、ルール作りや算定にも関わる企業の取り組み事例を紹介いただいた(昨年11月27日開催)。
CE指標に求められる観点とは(国立環境研究所 田崎 智弘氏)
主旨:CEの認識は国際的にも多様。指標は情報量縮減と意思決定支援のツール。グリーンウォッシュと非難されないよう、本質的な指標や対策を複数組み合わせた計測や実施が必要。
背景:日本他10ヵ国が物質資源フットプリントの65%を使用。資源利用による生態系損失は国際的に大きい。
定義:CEはEU法では資源価値の長期保全、有害物質等の環境影響低減、3R対策の優先順位を含めて定義。
開発:指標開発の主な国際的動向
*EUのCEモニタリング指標
*UNECE&OECDのガイドライン
*ISO規格59000シリーズ
*GCP(2025 COP30で公表予定)
*System Change Lab(WRI、BEF等)
*WBCSDのCircular Transition Indicator (ver4)(以下、CTI)
着目点:循環のアウトフロー(出口側)よりも生産時のインフロー(入口側)のリサイクル材利用割合、物質価値の維持、環境影響への着目が重要。
課題:国際競争力やレピュテーションリスク等、何が財務的リスクや機会になるか組織的に問い続けること。
リサイクル仕向け率と有効資源化率等の指標の違い、プラ対策でのバイオ起源の代替資源利用時の環境影響等にも注意が必要。(以下、概要)
EU:生産と消費/廃棄物管理/二次原材料/競争力と革新性/グローバルな持続可能性と回復力/の五大項目には資源セキュリティ/ライフサイクル思考/競争優位/の観点を含む。
UNECE&OECD:対策/物質循環と価値連鎖/の他、環境影響/社会経済の機会/からなる4ブロックを設定。
WBCSDのCTI:インフロー割合/循環利用の種類別割合/資源生産性/自然への影響/等からなる事業者を評価する指標を各版にて設定。
WBCSD他のGCP:GHGプロトコルの資源版を目指し、CTIに限定せず指標選定中。環境省や企業も協力。
System Change Lab:廃棄時の資源化率に対して生産時の素材利用率が及ばないギャップ、資源採取時の人権侵害や児童労働が未改善な状態をグローバルなデータで表示。
ESRS:資源のインフロー/アウトフロー/財務的影響とリスクと機会/等からなる要開示6項目を設定。
富士通とWBCSDのCEの取り組み紹介(富士通株式会社 永野 友子氏)
目標:顧客やサプライチェーンも含めた軸で製品の省資源化・資源循環性や資源効率向上の項目設定。
背景:欧州のCE政策パッケージやエコデザイン指令等の設計や消費者保護の規則へ製品で対応している。
LCA:資源を生産に戻すような製品のサービス化(PaaS)に伴い評価範囲を従来の製品LCAから拡大させている。
参加:EUで2027年以降義務化となるDPP(デジタル製品パスポート)の要件等やCEの評価指標やデータ連携等のルール作りに参加。
CTI:企業の循環経済移行状況の評価指標で、CSRDのうち資源のインフロー開示指標(ESRS-E5-4)としての活用可能性が議論されている。
循環型雇用指標について(ハーチ株式会社 加藤 佑氏)
事業:CEがテーマのデジタルメディア運営を通し企業や自治体等を支援。
主旨:循環都市への移行度を見る指標として雇用に着目。循環産業(回収/リペア/リサイクル等)や移行で失われる仕事のリスキリングも重要。
Circular Jobs Monitor:Circle EconomyとUNEPの共同により世界各都市の循環型雇用率を示すツールを展開。
循環型雇用:直接循環型と間接循環型で分類されたセクター別雇用人数を産業連関表等も用いて算定する。
事例:日本初のサーキュラーシティ宣言した愛知県蒲郡市での取り組みとして循環型雇用率の算定事例を紹介。
指標の役割:人材投資やリスキリング等の政策優先順位の検討、自治体間の比較や政策効果測定にも活用可能。
全体講評(NSC共同代表幹事 後藤 敏彦)
製造時の循環資源利用に規制のない日本ではメーカーが静脈産業に高品質を要求することが課題。CEを雇用や地方発展につなげる指標の役割も重要。