フロント/話題と人小嶌 不二夫さん(株式会社ピリカ、一般社団法人ピリカ 代表)

2025年01月17日グローバルネット2025年1月号

科学技術の力でごみ問題の解決へ

小嶌 不二夫(こじま ふじお)さん
株式会社ピリカ / 一般社団法人ピリカ 代表

あちこちで見かける散乱ごみ。拾ったごみをマップに投稿し、「ありがとう」を送り合うごみ拾いSNS「ピリカ」は世界130ヵ国以上で利用され、これまでに3.5億個以上のごみが拾われたことが一目でわかるようになっている。開発した小嶌さんは、科学技術の力で環境問題を解決することを目的に、2011年に24歳で株式会社ピリカを設立した。

子どもの頃に図鑑を通して環境問題に興味を持ち、大学院休学中に世界を旅した際、ジャングルの奥地にまで入り込んだごみやインドで嗅いだごみの悪臭などに衝撃を受けたという。帰国後、世界のごみ問題を他人とは違うアプローチで解決しようと決意。旅行中に利用した、スマートフォンの写真をマップにピン留めする機能にゲーム性があることや、外国で見た犯罪マップが通学や居住など人々の行動を自然と変えていることに気付き、ごみ拾い活動を見える化するごみ拾いSNS「ピリカ」の開発へとつながった。

現在はごみ分布調査サービス「タカノメ」やマイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」などの事業も展開し、国内外でのマイクロプラスチック流出源調査と対策の取り組みが評価され、2024年9月に「SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞」第5回環境の部を受賞した。

「科学の良さは、印象や心象に惑わされず答えを出せるところ」と小嶌さん。ピリカのミッションは、2040年までに自然界に流出するごみの量と回収されるごみの量を逆転させること。ITの力で人の能力に依存せずデータ収集ができるようになり、対策の効果測定やごみの分布を把握するための「ものさし」づくりに励んでいる。ごみ拾いSNS「ピリカ」を通じてごみ拾い活動を可視化することで、誰にも知られていなかった深夜早朝のごみ拾いにも光が当たり、利用者同士感謝を伝え合えることにも取り組む意味を感じているという。

「解きがいがある問題を見つけた」と小嶌さんは力を込める。ピリカはアイヌ語で「美しい」を意味し、企業ロゴに描かれているのは海鳥・エトピリカ。ごみの無い美しい地球を目指し、科学的に分析できる強みを翼に、迷いなく進む小嶌さんの姿そのものだ。(海)

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