フロント/話題と人山内 将司さん(都南工業給食協同組合 専務理事)
2024年02月20日グローバルネット2024年2月号
宅配弁当の洗浄設備を活用してリユースカップの洗浄サービスを開始
コロナ禍が明け、新たな日常を持続可能性に配慮したものに進化させようと、イベントで使い捨てないリユース(繰り返し使う)食器、社員に飲み物を提供するオフィスではリユースカップを導入する動きが加速している。リユースするためには洗浄が不可欠だが、既存の洗浄施設では対応できないほどだ。そんな中、2023年12月から東京都大田区でお弁当の製造・宅配を行う都南工業給食協同組合(となん給食センター、以下「となん」)がリユースカップの洗浄サービスを始めた。山内さんはこのサービスの担当責任者だ。
昭和30年代、「ものづくりの町」として知られる大田区内にはたくさんの町工場があり、各工場のおかみさんが多くの従業員のために毎日昼食を用意していた。その負担を解消し、栄養価の高いお弁当をリーズナブルに提供することを目的に、同区内の中小企業約500社が出資して昭和37(1962)年にとなんが設立された。お弁当を届けて空き容器を回収するという接点が組合員の交流の場としても活用できる利点もあり、最盛期には一日2万食が利用されていたという。
しかし、地方への工場移転や廃業などで同区内の中小企業は減り続け、組合員数も減少。コロナ禍での廃業もさらに追い打ちをかけた。さらに、お弁当を手軽に買える店の選択肢が増え、食の好みも多様化し、お弁当の宅配事業は厳しい状況にあった。
そこで、大量のお弁当容器を毎日洗浄する大型の食器洗浄機や消毒保管庫を利用し、使わない空き時間に、リユースカップの洗浄を始めた。
自らリユースカップの洗浄や利用企業に再出荷する前の検品作業にも関わるという山内さん。カップだけでなく、使い捨てのお弁当容器のごみも減らしたいという企業には、リユースカップとリユース容器に入ったお弁当をセットで配達することも提案できるという。同時に運ぶことで、輸送効率が上がり、CO2やコストの削減にもつながる効果が期待される。
「既にある洗浄設備を使って関心が高まっているリユースカップの洗浄をすることで、環境問題を解決する輪に参加できて良かった。もっと利用してもらいたい」と山内さんは新規事業に胸を膨らませる。(M)