環境条約シリーズ 381水俣条約第5回締約国会議
2023年12月28日グローバルネット2023年12月号
前・上智大学教授 磯崎 博司(いそざき ひろじ)
水俣条約(本誌13年2月)は、その発効日(17年8月16日)から5年以内に附属書A(水銀添加製品ごとの廃止期限)およびB(水銀・水銀化合物を使用する製造工程ごとの廃止期限)の改正の検討を、同じく6年以内に条約の有効性の評価を行うことを定めている。そのほか、水銀の発生源目録、利用可能な最良技術(BAT)・環境のための最良慣行(BEP)に関する手引、および、汚染区域管理手引の作成、水銀廃棄物の水銀含有濃度の設定なども求めている。
それを受けて水俣条約の第3回締約国会議(COP3)は、附属書の改正に関する技術・経済面の情報収集の開始、また、有効性評価のための枠組みや指標に関する情報収集と検討の実施、モニタリング手引の作成などを決定した。そのほか、発生源目録と手引の対象範囲の検討、および、水銀廃棄物のうち区分C(水銀汚染物)の水銀含有濃度の検討を決定し、また、汚染区域管理手引を採択した。その後COP4は(本誌22年8月)、附属書Aの改正(電球形蛍光灯など:25年末)を採択し、また、有効性評価に関わる「公開科学部会」の設置要綱を採択した。そのほか、低品位廃棄鉱石について、水銀の含有濃度を25mg/kg超で溶出濃度が0.15mg/L超と定めた。
23年10月30日から11月3日に開かれたCOP5は、附属書Aの改正(ボタン電池、開閉器・継電器、化粧品:25年末)(コンパクト蛍光灯:26年末)(直管蛍光灯:26年または27年末)および附属書Bの改正(水銀含有触媒を用いるポリウレタン製造工程:25年末)を採択した。これにより、全ての一般照明用蛍光灯の製造・輸出入が27年末までに禁止されることになった。また、「有効性評価作業部会」を設置し、評価指標を採択し、27年のCOP7で評価を行うことを決めた。そのほか、水・土壌への水銀の放出に関するBAT・BEP手引を採択し、零細小規模金採掘について、水銀使用の削減・廃絶および先住民族や利害当事者の適切な参加を求め、また、水銀汚染物の水銀含有濃度を15mg/kg超と定めた。