環境ジャーナリストからのメッセージ~日本環境ジャーナリストの会のページ気候危機に立ち向かう、「再エネ革命!ニッポンの挑戦」

2023年12月28日グローバルネット2023年12月号

テレビ朝日
山口 豊(やまぐち ゆたか)

観測史上最も暑かった今年の夏、世界各地で山火事や豪雨災害なども相次いだ。2023年は通年でも観測史上最も暑い年になることはほぼ確実だという。

IPCC第6次評価報告書は、地球温暖化は人為的なものと断定している。人為的だからこそ、私たちの行動が変われば、温暖化の勢いを緩和できる。地震や津波はその発生自体を減らすことはできないが、気候変動による災害を減らすことは可能なのだ。

日本最大のCO2排出源は、4割を占める発電分野だ。電源構成の70%にも上る過度な化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギー(再エネ)をどれだけ拡大できるかが、日本の気候変動対策のカギを握る。

ここで大事なことは、再エネの導入拡大は、地域と共生する形で進められなければならないということだ。再エネの資源は地域の大切な自然だ。都会の大資本が地域住民の頭越しに強引に野山を切り開くようなことはあってはならない。再エネは、地域の人々が主体となって、自然と調和する形で取り組んでこそ、真価を発揮するのだ。

秋田県の地元の風を生かした風力発電、福島県土湯(つちゆ)温泉の温泉資源に全く影響を与えない地熱バイナリー発電、岐阜県石徹白(いとしろ)集落の豊かな水を利用した小水力発電、岡山県真庭(まにわ)市の間伐材を燃料にする木質バイオマス発電、千葉県匝瑳(そうさ)市の耕作放棄地を蘇らせるソーラーシェアリング等々、今各地で、地域主体の再エネ導入が相次いで成功している。

これらの成功事例には共通点がある。それは、人口減少でどの地域も追い込まれていたということだ。地域が危機的状況にある中、地域存続をかけて人々が立ち上がり、再エネによる挑戦を始めた。自分たちの手元足元にある自然資源を破壊することなく上手に生かすことで、再エネで電気を生み、お金を生み、雇用を生み、若者が帰ってくるようになったのだ。

環境省によれば、日本には全発電電力量の2倍の再エネ資源があり、その多くは人口減少の進む地方に眠っている。

世界6位の広大な海を生かす洋上風力発電のポテンシャルは、日本の全電力を上回る。林業の衰退で荒れた森を手入れすれば、間伐材という木質バイオマスの燃料が生まれる。雨が多く水が豊かな日本は小水力発電の適地だ。火山大国である日本には世界3位の地熱資源が眠っている。

日本のエネルギー自給率は主要先進国の中で最低の13%。化石燃料購入費は昨年度、円安や資源高の影響もあり35兆円を超えた。その一部でも、国内の再エネに回せば、地方が元気になる。化石資源のない日本だが、再エネ資源は豊富にあるのだ。エネルギー安全保障の観点からも、再エネで自給率を高めることが欠かせない。

さらに、再エネは成長産業でもある。

長崎県五島市では、戸田建設の浮体式洋上風力が商用運転を続け、現在8基を追加投入中。その技術は世界トップレベルだ。日本の宮坂力・桐蔭横浜大学特任教授の発明であるペロブスカイト太陽電池は、超軽量、折り曲げ自在で、あらゆる場所を発電所に変える。原材料はヨウ素などほぼ全てを国内で賄える純国産エネルギーだ。国産蓄電池で再エネを爆発的に普及させるという、パワーエックスの伊藤正裕社長は、電気運搬船の25年の完成を目指している。

日本の再エネ比率は約20%で欧州主要国の半分ほどと伸び悩んでいる。だからこそ伸びしろも大きい。原発や火力などの集中型エネルギーから、分散型エネルギーである再エネへの移行を少しでも進めれば、東京一極集中から分散型社会への移行を促すことにもつながる。再エネは気候変動対策であり、強力な地方創生策になり、日本経済を復活させる成長産業になり、エネルギー安全保障にも寄与するのだ。

今、人口減少で苦しんでいた地方から変革が始まり、再エネによる技術革新も生まれている。気候変動対策は決して負担ではない。再エネにより持続可能な社会を実現させる、新しい時代への挑戦なのだ。

※企画取材した特番「再エネ革命!ニッポンの挑戦」は、TVerで無料でご覧いただけます。

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