フロント/話題と人 ミシェル・コノリーさん(コミュニティ・グループConservation North 創設者・代表)

2023年12月28日グローバルネット2023年12月号

世界で唯一の森を守るために~カナダから来日~

ミシェル・コノリーさん
(コミュニティ・グループConservation North創設者・代表)

カナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州には、海岸から離れた内陸部にありながら雨が多く、巨木がそびえ、カリブーやハイイログマなどの大型の野生生物が生息する「内陸温帯雨林」が広がっている。原生の状態で残された温帯雨林地域の一つだ。しかし、BC州では以前から製材やパルプ用に原生林が伐採され、近年は日本で推進されているバイオマス発電向け燃料の一大産地となり、残された貴重な森林の伐採が続いている。11月、この森の保全活動を進めるConservation North代表・コノリーさんが来日し、現地の課題と保全に必要な行動を、日本政府、関係事業者や金融機関などに訴えて回った。

2017年に発足した同団体は、生物学者、林業従事者、写真家、市民など、多様なバックグラウンドを持つ約20人で運営されるボランティアのグループ。調査、抗議行動、メディアを通じた啓発など、地域で草の根の活動を展開している。

BC州の最大都市バンクーバーの郊外で育ったコノリーさんは、15歳の時からこうした活動に参加。抵抗が実際の保全措置につながる場面を目の当たりにしてきた。2011年に、大学院進学で州北部のプリンス・ジョージに移住し、同地の温帯雨林の豊かさに魅了された。しかし、BC州の人口は南部に集中しており、「多くの人はその魅力を知らない」と語る。同地で組織的な保護運動が存在しなかったため、自らグループを立ち上げた。

設立当初は「老齢林(old growth:樹齢が何世紀にも及ぶ森林)」の保全が活動の主眼であったが、ペレット産業の拡大により、製材としての価値が低く、従来は伐採の対象にならなかったその他の天然林も、ペレット向けに切られ始めたという。枯れたり虫害を受けた木々でも生態的重要性は変わらないが、政府や企業はそれを「不健康」「低品質」「(虫害で)傷んでいる」として、伐採を正当化している。そこで2020年、団体として追求する保全の対象を「原生林(primary forest:過去に産業的に伐採・かく乱されていない森林)」に拡大した。

「現場の実態を明らかにすることが、変革を起こす鍵。日本の人にも真実に目を向けてほしい」。(克)

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