特集/広がるリユース~循環型社会実現のための切り札~続々と誕生するリユース容器シェアリングサービス

2023年10月13日グローバルネット2023年10月号

(一財)地球・人間環境フォーラム
天野 路子(あまの みちこ)、中畝 幸雄(なかうね ゆきお)

 これまで、国内のリユース容器は、主にお祭りや音楽・スポーツイベントなどで導入が進んできました。一方、世界に目を向けると、フランスでは循環経済法に基づき、段階的に使い捨てプラスチック容器包装の市場投入が禁止されることを受けて、ファストフード店などでリユース容器の導入が進み、台湾・台北市ではコンビニチェーンなどでリユースカップの活用が進んでいます。これらの国際的な動きに沿って、日本国内でも日常的なシーンで利用できるリユース容器のシェアリングサービスが生まれています。
 本特集では、広がりを見せるリユースの事例と、リユース容器の導入による環境負荷の低減を示すLCA 分析結果を紹介し、循環型システムへの転換による「使い捨てない社会」について考えます。

 

 コロナ禍で飲食店からのテイクアウトが急増しました。使い捨て容器が使用されることが一般的ですが、一方でリユース容器を用いたシェアリングサービスが複数誕生しました。アプリやLINEを使って簡単にリユース容器の貸し借りができます。
 カフェのテイクアウトで使用できるリユースカップや、飲食店やキッチンカー、宅配で利用されるリユース容器など、さまざまなサービスをその特徴と合わせて紹介します。

Re & Go


大手チェーン店も参加する日本発のリユース容器シェアリングサービス。リユースの回数や環境負荷低減効果をリアルタイムで可視化。提携先の洗浄施設で衛生管理を実施。

  • 容器の種類

 蓋つきステンレス製タンブラー

  • 導入対象

 カフェ、コーヒーショップ、ドリンクを提供する飲食店

  • 導入事例

 スターバックスコーヒージャパン(丸の内周辺、渋谷区周辺、名古屋市)、ローソン(丸の内周辺)、他、コーヒーショップ等

  • サービス概要

 「捨てずに返すと、もっとおいしい」をコンセプトに、2021年から実証実験を重ね、2023年8月より東京・名古屋でリニューアル版がスタート。利用者はLINEアプリ(+スマートフォンカメラ機能)を使って、店頭でドリンク購入時に容器の「借りる」「返す」を登録。加盟店であればどこでも返却が可能で、各店頭で返却された容器は輸送パートナー企業が回収し洗浄パートナー企業の洗浄施設で洗浄され、加盟店舗に繰り返し供給される。

 ステンレス製の複層構造のタンブラーは保温・保冷性に優れ、使い捨てカップと比べて長く美味しくドリンクを楽しむことができる。利用者はアプリ上で環境負荷の低減効果を確認することができ、利用のモチベーションも上がる。令和5年度版「環境白書」(環境省発行)にも事例として取り上げられ、注目が高まっている。

Megloo


飲食店、カフェ、キッチンカー、イベント、デリバリーサービスなどさまざまな場所で使用される使い捨て食品容器を削減

  • 容器の種類

 密閉性のある蓋つき食品容器

  • 導入対象

 飲食店(商業施設・商店街)、キッチンカー、イベント飲食店舗

  • 導入事例

 鎌倉駅周辺、蔵前(東京)、目黒(東京)、横浜、栗山(北海道)、袋井(静岡)  (以下、過去に実証実験)墨田区キラキラ橘商店街、鈴鹿サーキット、神奈川県庁前(キッチンカー)、中野セントラルパーク、アースデイ東京他

  • サービス概要

 ライフスタイルの変革により急増したテイクアウトメニューに由来する使い捨て容器を削減するため、2021年、鎌倉駅周辺の店舗を対象にサービスを開始した地域共通型リユース容器シェアリングサービス。テイクアウト注文時にmegloo容器を選択し、受取・返却時にLINE公式アカウントから「受け取る」「返却する」をタップ。美味しくいただいた後は、加盟店のどこでも返却可能で、容器は店内利用の食器と同様に洗浄され、繰り返し利用される。

 中敷き容器もあり、多様なメニューに対応。使い捨て容器に比べ、密閉性・保温性も優れ、しっかりした容器で最後まで食事を楽しめる。テイクアウトを選択して持ち帰っても家庭やオフィスでごみにならず、イベントでの廃棄物発生も抑制することができる。

CUPLES


テイクアウトコーヒーの使い捨てカップをリユースに

  • 容器の種類

 蓋つきプラスチックカップ

  • 導入対象

 カフェ、コーヒーショップ、ドリンクを提供する飲食店

  • 導入事例

 オニバスコーヒー各店、Coffee Wrights蔵前、LIGHT UP COFFEE 下北沢、私立珈琲小学校ほか

  • サービス概要

 コーヒーショップ発!テイクアウト時にリユーザブル(=繰り返し使える)カップをシェアするサービスCUPLES。2021年からリユースできるCUPLESカップでの提供を開始した。この取り組みに賛同する店舗は増え続け、現在では都内20店舗以上で使用されている。

 専用のアプリをスマートフォンにダウンロードし、利用できる店舗を検索し、CUPLESの利用を伝え、商品受取時に店頭のQRコードを読み取ることで利用登録が完了する。加盟店ならどこでも返却が可能で、返却時のQRコードを読み取ることで、返却が完了。カップは各店内で洗浄した後、また再利用される。飲み口付きの蓋がついたしっかりしたカップで、リピートユーザーも多く、サービス全体で何回カップが使用されたかがわかるので、口コミやSNSなどを通じて利用者の数を増やしている。今後は加盟店をさらに拡大していく。

Circloop


オフィスやコワーキングスペースの使い捨てカップをリユースに

  • 容器の種類

 蓋つきプラスチックカップ

  • 導入対象

 オフィス、コワーキングスペース

  • サービス概要

 オフィスの給茶スペースなどで日常的に使用されている使い捨てカップ。毎日多くの方が利用するので、その廃棄量は膨大なものとなる。ワークスタイルの変革によって最近ではコワーキングスペースを活用するケースも増えたが、使い捨て以外の選択肢はあまりない。「捨てない世界」を目指し、オフィスやコワーキングスペースで導入が始まっている。

 利用者は給茶スペースに設置されているカップを手に取り、好きな飲み物を注ぎ、使い終わったら専用の回収箱に戻すだけで、これまでの使い捨てカップの利用となんら変わることはなく気軽に利用できる。回収されたカップは提携する洗浄施設で丁寧に洗浄され、またオフィス等に帰ってくる。まさにcircleとloopを繰り返す。新たにコーヒーミルや豆がセットになったオフィスカフェとセットとなったプランも開始し、オフィスやコワーキングスペースにとって便利なパッケージサービスとして利用も可能。

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