環境の本山に生きる 福島・阿武隈~シイタケと原木と芽吹きと
2023年08月15日グローバルネット2023年8月号
著●鈴木 久美子、写真●本橋 成一
著者は中日新聞東京本社で生活部長を務める現役の新聞記者。東日本大震災と原発の事故により、阿武隈の山のシイタケ栽培はどうなっているのか。放射能汚染で避難地域となった福島県田村市都路町のシイタケ農家の人びとを中心に、2018年から続けている取材・報道の内容を書き下ろした一冊。土門拳賞などを受賞した写真家・本橋成一氏のモノクロ写真が重みを添えている。
都路町はシイタケを栽培する原木のコナラなどの一大生産地だった。ルポは事故から10年たっても続いている生産者たちの苦悩と挑戦、「山を引き受け」「山の生活をつないでいる」人びとに密着している。「こんな事故を起こしてしまった情けない人間を、まだ山は守ってくれている。原発は速やかに廃止するのが道理である」と結んでいる。(彩流社、2,200円+税)