環境の本山林王

2023年06月15日グローバルネット2023年6月号

山林王

著●田中 淳夫

本書は、林業家・土倉どぐら庄三郎の生涯と業績から、幕末~大正初期の日本の歩みを森・林業という視点から追いかけている。

庄三郎は、吉野林業の中心地、奈良県川上村に生まれた。急峻な山での林業では、木を育てて伐採することに加え、木材の搬出が重要と考え、林道などの整備に注力。1899年に発行した『林政意見』では、「森林こそが日本を支えるという気概と国家百年の大計」を唱え、政府に林政の見直しを迫った。

さらに、林業で得た巨万の富を「社会改造をめざす政治活動と、人づくりの教育活動」に惜しみなく注いだ。自由民権運動に参加し運動を資金面でも支え、同志社など多くの学校を資金面で支援し、日本女子大学の創設など女子教育にも熱心に取り組んだ。

林業も山村も危機に瀕している日本が、「立ち直るには何をすべきなのか、そこに必要な揺るぎない信念」を伝えたいという著者の思いが詰まった一冊。(新泉社、2,500円+税)

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