環境条約シリーズ 373生物多様性条約の第15回締約国会議第2部
2023年04月14日グローバルネット2023年4月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
2022年12月7日から19日まで、モントリオール(カナダ)において生物多様性条約の第15回締約国会議の第2部が開かれ、①「愛知目標」の後継となる「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の設立、②同枠組みの達成を促進・支援するための措置の設定、また、③「遺伝資源に関する塩基配列情報の使用から生じる利益の配分のための多国間メカニズム(世界基金を含む)」の設置に関する決定が採択された。
①の枠組みは、2050年の展望(自然と共生する世界)と到達すべき長期目標に向けて、生物多様性の回復のための緊急行動を実行することがその使命であると述べている。また、そのために次の3分野について30年までに達成すべき目標を掲げている。
まず、生物多様性への脅威の削減(目標1-8)については、絶滅リスクの大幅削減、陸域・海域それぞれの30%の保全管理(30 by 30)、劣化した自然地域の30%の再生、定着外来種の半減、各種環境汚染の半減、自然に基づく解決策の活用など、次に、人々の必要への対応(目標9-13)については、農林水産業の持続可能な管理、生態系の機能・サービスの維持・回復、都市における自然区域の増加・維持管理など、また、手段と解決策(目標14-23)については、生物多様性の主流化、事業活動における影響評価・情報提供の促進、食料廃棄の半減、持続可能な消費への転換、有害な補助金の廃止、年間2,000億ドルの資金供給、情報公開と意思決定への広範な参加などである。
②の措置としては、①の枠組みの進捗を把握し評価するための仕組みの設定、国家戦略の改定および国別報告書の提出の要請ならびに①の枠組みの進捗の再検討手続の設定、第I期資源動員戦略(2023-24)の策定および特別信託基金(世界生物多様性枠組基金)の設置、能力構築・開発戦略枠組および科学技術協力メカニズムの設定などが決定された。
③のメカニズムについては、その設置は決まったが具体的内容は定まっておらず、今後、制度構築のための公開作業部会において検討が進められる。