環境条約シリーズ 372ワシントン条約の第19回締約国会議

2023年03月15日グローバルネット2023年3月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

2022年11月14日から25日まで、ワシントン条約の第19回締約国会議がパナマシティ(パナマ)において開かれ、次のような附属書の改正が採択された。

キガシラヒヨドリ、ニシキセタカガメ、モエギハコガメおよびリーススッポンが附属書ⅡからⅠ、アデレードアオジタトカゲが附属書ⅢからⅠへ移行された。ドロガメ属の一部が附属書Ⅰにその他は附属書Ⅱに、ツノトカゲ属、アマガエルモドキ科、ワニガメ・カミツキガメ、アメリカスッポン属、サメ・エイ類(本誌22年12月)、ナマコ、シタン属、アフリカマホガニー属などが附属書Ⅱに掲載された。他方、メキシコプレーリードッグ、シジュウカラガン、アホウドリ、プエルトリコニジボアは生息数の改善により、南シロサイ、クチビロカイマン、イリエワニは特定個体群について条件付きで、附属書ⅠからⅡへ移行された。

ところで、弦楽器の弓の材料であるブラジルボクを附属書ⅡからⅠへ移行する提案については、演奏家から国境を越えた音楽活動に支障が出るとの懸念が示された。最終的に、附属書Ⅱのままで「すべての部品、派生品、および完成品。ただし、完成した楽器、その付属品、その部品の再輸出を除く」旨の注記を付すという修正案が出され、それが採択された。

附属書改正のほかに、25年までの作業計画、能力構築、ジェンダーと野生生物国際取引、附属書掲載種の識別資料およびウミガメの保全と取引に関する決議、ならびに、動物由来感染症のリスクの軽減、他の条約や国際機関との協力、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)による野生生物種の持続可能な利用に関する評価報告書、先住民族および地元の共同体の関与、国内象牙市場に関する報告の継続、そして違法取引への対策などに関する決定が採択された。

上記の附属書改正を受けて、国内では、種の保存法の下の政令を改正するための手続きが進められ、パブリックコメントを経て、それは23年2月23日(改正附属書の発効と同日)に施行された。

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