フロント/話題と人一場 未帆さん(有限会社 一場木工所 代表取締役)
2023年02月15日グローバルネット2023年2月号
ウッドデザインの力で利益を生み出す木育を
おにぎりや卵焼き、食パン ――心地よい肌触りとほんのり木の香りが漂うおままごと遊び用の木製おもちゃを販売する一場木工所。広島県三次市にある同社では、木のぬくもりや温かみを感じることで豊かな感性を育む「木育おもちゃ」の製造や、木材に関わる人に利益が出るよう助言や提案をする「木材コーディネート」などの事業で、主に地元・広島の地域材や未利用材の活用に取り組んでいる。昨年まで7年連続ウッドデザイン賞受賞を果たすなど、「森と人をつなぐプロデュース会社」として成長し続けている会社だ。
一場さんが創業者の父親から会社を継いだのは2003年。食品会社に就職し、その後イラストレーターとしての起業を考えていたが、父親が体調を崩したことをきっかけに会社を継ぐことを決心。「小さい頃から木で遊ぶことは大好きだったのですが、スギとヒノキの違いや加工の仕方など、基本的・専門的なことが全くわからず、ゼロからのスタートだったので、勉強に勉強を重ねました」と苦労を振り返る。
父親が経営していた頃は加工の下請けが中心だった。しかし、「今後は木の本質、手作りの丁寧さ、環境に配慮したものの良さが求められる」と信じて疑わなかった一場さんは、小さい頃から大好きだった木の香りやぬくもりを「伝え、提案する側になりたい」とおもちゃから商品開発を始め、さらに分野を広げている。
2月中に、愛知県内の木工会社と協業し、木育トラックのクラウドファンディング(CAMPFIREを予定)を始める。声がかかれば木育おもちゃを全国どこにでも運んでいき、子どもの遊び場や一時預かり、災害が起きた場合にはモバイルステーションとしても活用できる。木育トラックは一場木工所が目指す「商売につながる木育」を集めたもの。「木育が利益を生み出すために欠かせないのがウッドデザイン。誰でも使えるように公開して地域で共有すれば、価値がないと見なされている地域の山や木材がお金を生み出し、地域の里山の再構築につながる」。同社を運営するのは女性3人。互いになんでも言い合える職場から次々と生み出される木育のアイデアに今後も注目だ。(依)