フォーラム随想ビックリネーム

2022年12月15日グローバルネット2022年12月号

日本エッセイスト・クラブ理事
森脇 逸男

 ある日新聞を読んでいて、ちょっとびっくりした。投書欄だ。この日は「若者の声」ということで、成年以下の読者の投書を載せていた。内容はそれぞれもっともで、同感できる観察や主張だったが、びっくりというより、これは面白いと思ったのは、その投書者の名前だ。姓ではなく、名の方だ。
 例えば、中学生のO君、15歳。肺がんの祖父の死を悼む投書だったが、名前は「優月」と書いて「ゆづき」と読ませる。同じく中学生のKさん、青首大根を育てているという報告だが、名前は「希乃羽」、読みは「きのは」、1歳下のやはり中学生のM君、いじめなど学校の問題を論じていたが、名前は「大紋」、読みは「だいもん」。同年のKさん。梨狩りの報告だが、名前は「咲良」、読みは「さくら」。
 同年のHさん、毛髪を寄付したいので伸ばしているが、名前は「由記菜」、読みは「ゆきな」。小学生のM君、新聞をとってほしいと親に訴える内容だが、名前は「由」、読みは「ゆい」。
 投書はまだまだある。18歳の成人になったというG君、「真好まこの」、英語テストが不安だというK君「真彩まや」、安倍元首相を悼むS君「紘大ひろと」、防災を訴えるH君、「帆高ほだか」、ウクライナを憂えるHさん「幸芽こうめ」。短歌の投書もある。小3のSさん「陽葵ひまり」、やはり小3のOさん「莉桜りお」さんなど。運動会の記事にも、いろいろ難読ネームが登場する。Sさん「怜奈れな」、Oさん「瑠子るこ」、Mさん「斐南乃ひなの」、K君「博愛はくあ」、O君「惇貴あつき」、Mさん「桃奈ももな」、M君「光理ひかり」、Y君「煌翔きらと」など。
 以上それぞれルビを付けず、漢字だけだと、はて、何と読むのだろうと首をかしげることになりそうだ。

 

 ただ、どうやら難読ネームは小中学生だけではないようだ。その気になって新聞を読んでいると、子供の名前で、これは何と読むのだろうと疑問になる名が次々に現われる。今の小学校や中学校の先生は、児童生徒の名を読むのにほんとに苦労しているのではないかと同情してしまうが、苦労するのは、どうやら先生に限らない。ごく普通の人も最近は苦労することが多いのではないか。最近は成人年齢をとっくに過ぎた人でも難読ネームが結構多いことに気が付いた。
 例えば、スポーツ選手だ。スポーツ欄に載る名前で読みにくい名前には、新聞社の方でちゃんとルビを付けてくれるので助かる。この例は、言って見れば無数にある。
 例えば体操、谷川わたる、谷川かける、ボクシング、八重樫あきら、プロ野球、船迫大雅ひろまさ、陸上、北口榛花はるか、佐藤圭汰けいた、サッカー、上田綺世あやせ、遠藤わたる、川島永嗣えいじ、工藤壮人まさと、田中あお、前田大然だいぜん、南野拓実たくみ、山根視来みき、卓球、長崎美柚みゆう、柔道、冨田若春わかば、大田彪雅ひょうが、舟久保遥香はるか、新添左季さき、ボルダリング、藤井こころ、川又玲瑛れい、森秋彩あいといった具合だ。

 

 新聞がルビを付けてくれる例は、他にもある。例えば、地方中央の選挙の候補者、ルビ付きの例が多い。例えば東京の某区の区長選立候補者名簿、康行、浩一、貴子、恭子といった、別に難しくない字の名前にも、やすゆき、ひろかず、たかこ、きょうこといった読みが付けてある。これはまあ、候補者への親近感を有権者に持ってもらうためだろう。これはちょっと読みにくい読みだったのかもしれないが、都会議員のニュースで、A千陽氏やN数氏の名にちはる、かずさといったルビが付けられていた。
 まあ皆さんが、子供には、太郎、次郎といったよくある名前ではなく、他の人とは違うユニークな名前を付けたいと思う気持ちはよくわかる。外国にもウイリアムとかジェームズなどありふれた名を敬遠する傾向があるらしい。しかし、あまりにユニークで、読み方がわからない名も考えものだ。その点考えていただければと思う。やはり新聞にあった秋の叙勲受章者名簿の名は、進、滋、克典、憲二、信子、令子などだった。

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