特集/次世代に向けた低炭素社会の構築を目指して~「低炭素杯2016」受賞団体の地域での取り組み環境大臣賞金賞/文部科学大臣賞の受賞事例の紹介ファインモータースクール(埼玉県さいたま市)
2016年08月15日グローバルネット2016年8月号
環境大臣賞および文部科学大臣賞に選ばれた6団体のうち4団体の取り組みについて編集部がまとめた内容を紹介します。
グローバルネット編集部
文部科学大臣賞 社会活動分野
教習所が発信するエコドライブ!~誤解を解き自主的な実践を~
ファインモータースクール(埼玉県さいたま市)
免許の取得段階で自然にエコドライブが身に付く「楽エコ教習」を中心に、多様な取り組みを通じてエコドライブの誤解を解き、教習生に限らず、地域住民などにも広く自主的な実践を促す取り組みを展開している。
「やさしい発進」や「ゆとりを持った車間距離」、「加速・減速の少ない運転」など(下表)、環境負荷の軽減に配慮し、運転操作を改善して、より燃費良く走る「エコドライブ」により、交通事故の発生数は減り、ガソリン代も節約できる。しかし、エコドライブに関するアンケートを実施したところ、「面倒」「難しい」など誤解も多いことが明らかになった。
楽エコ運転のすすめ
1. ふんわりアクセル
2. 車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
3. 減速時は早めにアクセルを離そう
4. エアコンの使用は適切に
5. ムダなアイドリングはやめよう
6. 渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
7. タイヤの空気圧から始める点検・整備
8. 不要な荷物はおろそう
9. 走行の妨げとなる駐車はやめよう
10. 自分の燃費を把握しよう
そこで、「あらゆる人たちに対し、一人ひとりに合わせた方法でエコドライブのメリットを伝えよう」と工夫を凝らした情報発信を始めた。
免許の取得を目指す教習生に対しては、2008年11月から、日本で初めて、温暖化の背景なども組み込んだ「楽エコ教習」を始めた。安全性・環境性・経済性を兼ね備えたスクール独自の運転方法や車の使い方で、燃費向上やCO2削減、ガソリン代の節約につながる。環境に配慮した運転を心掛けることで、自然と余裕のある穏やかな運転になり、安全性も向上する。
企業や自治体、地域住民など、すでに免許を持つドライバー向けにもさまざまな講習を実施。受講者には埼玉県庁から「エコドライブアドバイザー証」が交付されるなど、他の団体や自治体と連携した普及活動も行っている。
さらに、地域の小学校へ出向き、体験型授業も行っている。「子供のころからエコドライブに親しみ、大人になったら当たり前のように実践してもらう」のが狙いだ。また、授業を受けた子供を通じた、家庭での親の教育にも期待する。
他にも、中高生の職業体験や大学生のインターンシップを受け入れ、地域のイベントにも積極的に参加・協力して、エコドライブに関する情報を発信している。
教習所の枠を超えたさまざまな取り組み
スクールではさらに、森林再生活動に取り組むNPO団体と協働し、森づくりによるCO2削減にも取り組んでいる。教習生が一人入校するごとに森づくりの活動に寄付をし、地域の人たちと森で育林作業を行うイベントも主催するなど、CO2吸収源である森林を育む活動を通じ、自動車により排出されるCO2の吸収に寄与し、環境負荷を低減することを目指している。
また、昨年6月、埼玉県をはじめ、自治体や環境団体の後援を受け、県民のエコドライブの実践支援を目的とする燃費管理サイト「ECO drive SAITAMA」を立ち上げた。燃費計算ツールは、誰でも無料で登録・利用することができ、登録すると、給油するたびに走行距離や給油量を登録するだけで、自分の燃費を確認できる。
このように、自動車教習所という枠を超え、エコドライブの普及促進を訴えるだけでなく、地域に活動の場を広げた社会貢献と環境保全活動の実践を推進している。