フロント/話題と人眞田 典子さん(Sera Creations 代表)

2022年02月15日グローバルネット2022年2月号

問題意識を行動に
~脱象牙、気候変動、コンサート~

眞田 典子(さなだ のりこ)さん
Sera Creations代表

ワシントン条約で国際取引が禁止されている象牙。諸外国では近年、その国内取引を禁止する動きが進んでいるが、かつて最大の輸入・消費国であった日本の規制は遅れている。その中で設置された東京都の象牙取引に関する有識者会議。その第6回会合(1月27日開催)で、象牙代替素材を使用した民族楽器アイテム開発の事例として、Sera Creationsの取り組みが紹介された。

約10年前、代表の眞田さんは箏教室に通い始めたとき、弦を支える箏柱ことじや箏爪に当然のように象牙が使われていたことに問題意識を持った。しかし、当時の和楽器店に象牙以外の選択肢は、音質が劣り環境負荷の高いプラスチック製しかなかった。そこで「自分が求めるものは自分で作ろう」と、2016年にSera Creationsを設立。同年、滋賀のメーカーとファインセラミックス製の箏爪を共同開発。2018年には富山の製紙会社と川崎市のバイオ樹脂会社の協力の下、セルロースナノファイバー(CNF)を使った箏柱を発表。現在開発中の100%竹のCNFで出来た箏爪は、ファインセラミックス製と異なり摩耗性があるが、装着時の温かみや吸汗性、フィット感は優れているという。2月現在、第2回のモニター調査を実施中であり、アンケート結果を基に改良を加え、今春の一般販売を目指す。今後、三味線の象牙製のバチや主に犬・猫が使われている皮などでも、代替素材の開発を予定する。

自身のことを「考えるより動いちゃう派」と語る眞田さん。実は、他にもさまざまな活動を手掛ける。気候変動への関心をきっかけに、2019年10月、元アメリカ副大統領アル・ゴア氏が来日して開かれた、気候変動問題について学ぶトレーニングプログラムに参加。同年12月には、プロのピアニストを招いたコンサートで、演奏の前に気候変動について自ら講演した。「音楽と組み合わせれば、普段環境問題を縁遠く感じている方々にも意識を向けてもらえる」と考え、以降、同様のコンサートを年に数回開催している。

社名の由来は、“ケセラセラ”(「なるようになる」)。次にどのような人とつながり、どのようなプロジェクトが生まれるのか。箏教室での疑問から大きく広がった予想外の展開を、眞田さんは楽しんでいるように見えた。(克)

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