環境条約シリーズ294南極の環境保護や管理などについて取りまとめる南極条約協議国会議および環境保護委員会
2016年09月15日グローバルネット2016年9月号
前・上智大学教授 磯崎 博司
南極の環境保護や管理などについて取りまとめる南極条約協議国会議および環境保護委員会
2015年6月1日から6月10日まで、ブルガリア・ソフィアにおいて、南極条約協議国会議および環境保護委員会(本誌2014年12月)の第38回/第18回会合が開かれた。そこでは、予算、作業計画などに関する決定、および、南極環境ポータル、気候変動対策計画、重要な鳥類区域、気候プロセスにおける南極の役割などに関する決議が採択された。また、措置として、環境保護議定書の下の南極特別保護地区(ASPA)ごとに定められている管理計画の改定17件、南極特別管理地区の管理計画の改定1件、および、南極史跡記念物(AHSM)の新設2件が採択された。
その第39回/第19回会合は、2016年5月23日から6月1日まで、チリ・サンティアゴにおいて開催された。そこでは、予算、作業計画、事務局長の選任などに関する決議、および、環境影響評価指針、訪問者指針、地熱地域での行動綱領、非在来種マニュアル、鉱物資源開発の禁止などに関する決議が採択された。また、措置として、ASPAの管理計画の改定8件とAHSMの変更1件が採択された。
両会合で採択された各ASPA管理計画の改定には、航空機着陸地点や野営地点の訂正、航空機の飛行高度の変更、工作物設置目的への「管理活動」の追加、工作物設置期間の変更、設置工作物の除去予定期日の明記の義務付け、搬入物品の滅菌方法の変更、ASPA内のAHSMへの立ち入り可能人数の変更、南極の哺乳類・鳥類への接近距離の設定などが含まれていた。
以上のうち、措置(議定書保護区の指定、管理計画の改定)は当該会合後90日で発効するため、それまでに国内制度の改正が必要になる。日本においては、南極条約環境保護議定書には南極環境保護法が対応しており、南極地域における活動には環境大臣による確認が義務付けられている。とくに、各種保護区や管理計画には、南極環境保護法の下の施行規則が対応しているため、両会合を受けて、その施行規則の一部(別記、別表第4、別表第6)が改正された(2015年環境省令第30号、および、2016年環境省令第21号)。