環境条約シリーズ 352漁業条約と地域漁業管理機関

2021年07月15日グローバルネット2021年7月号

前・上智大学教授
磯崎 博司

海洋法条約は、最適利用に向けて、環境要因や関連魚種の状況を勘案して最大持続可能生産量(MSY)に基づき200カイリ水域における総漁獲可能量や管理措置を定めることを、沿岸国に対して義務付けている(61条・62条)。他方、200カイリ水域を越える移動性漁類、高度回遊性魚類および溯河性さくかせい魚類については、地域漁業管理機関(RFMO)を通じて協力することを、漁業国および沿岸国に対して義務付けている(63条・64条・66条、117条 119条)。

それらを受けて、移動性・高度回遊性魚類に関する協定が採択された(本誌1996年4月)。また、RFMOに関しては、以下に示す対象海域とRFMOの略称のように、世界各海域において整備されてきている。

高度回遊性魚類(マグロなど)については、東部太平洋:IATTC、大西洋:ICCAT、バルト海:IBSFC、インド洋:IOTC(本誌98年8月)、中西部太平洋:WCPFC(本誌2001年6月)、ミナミマグロ回遊海域:CCSBT(本誌97年2月)が設置されている。

移動性魚類(底魚類)については、北西大西洋:NAFO、北東大西洋:NEAFC、南東大西洋:SEAFO、西部中央大西洋:WECAFC、地中海:GFCM、北西アフリカ海域:SRCF-CSRP、ペルシャ湾・オマーン湾:SEAFDEC、インド洋・太平洋:APFIC、南インド洋:SIOFA(本誌14年5月)、中央ベーリング海(スケトウダラ):CCBSP、北太平洋:NPFC(本誌14年6月)、南太平洋:SPRFMO、南極海:CCAMLR(本誌13年12月)が設置されている。中央北極海(本誌19年9月)のRFMOは未設置である。

溯河性魚類については、北大西洋:NASCO、北太平洋:NPAFC(本誌96年8月)が設置されている。

上記のほか、南太平洋には、長距離流し網漁業禁止条約(本誌92年6月)も定められている。また、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止については、FAO公海漁業遵守協定(フラッギング協定)(本誌04年6月)と、IUU漁業防止寄港国措置協定(PSM協定)(本誌16年8月)が定められている。

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