シンポジウム報告／リユース革命！容器包装で始まるサーキュラー・イノベーション～国内編～〈リユースビジネス事例①〉
「量り売り」から広がる未来のための今の暮らし

株式会社 斗々屋
ノイハウス　萌菜さん

斗々屋は、3年ほど前からさまざまな活動を通して量り売りの魅力を地道にお伝えしている小さな会社です。『「私たちは地球一個分の暮らし」を実現するための「モノ」と「コト」を提案する』ことをミッションとし、「ごみが一切出ない量り売り」を事業の柱にしています。利便性も経済性も犠牲にする必要はなく、限りある地球の資源と限りない経済発展の両立を目指しています。

ゼロウェイストの量り売りの可能性を探る

2019年9月から約1年間、東京・代々木で日曜日のみ営業する量り売りの店nue by Totoyaを経営し、今年1月には東京・国分寺のカフェ内で常設店としてオープンした後、4月にリニューアルオープンし、国内で初めて量り売り専用のプラスチックフリーの什器を使っています。

オープン当初から「ゼロウェイスト」を柱にしています。販売する商品は個包装を一切せず、仕入れる際はできるだけごみが出ない形で卸し先から納品してもらえるよう調整・工夫を重ねています。

お客様には商品の持ち帰り用の容器類を持参していただくようお願いし、私たちは使い捨ての容器・包装・袋など、有料でも提供しません。そして扱う食材はすべて、オーガニック、フェアトレードを基本としています。

ゼロウェイストを実現するため、これまでさまざまなことにチャレンジしてきました。例えば、空き瓶をコミュニティの皆さんから煮沸したものを寄付していただき、「コミュニティ瓶」として無料で必要なお客様に使っていただきました。

新型コロナウイルス感染症が拡大し、衛生面について心配の声がありましたが、パッケージされている商品に比べて量り売りで使う瓶やトングなどは触る部分が決まっており、個包装されている商品とは逆で、食材自体は触らないため量り売り特有の問題はないということを伝えつつ、消毒することや適切な距離を保つことをして量り売りを利用してもらいました。お客様には必要に応じて量り売りのやり方を説明したり、袋や容器を持参して来なかった方にお話しするなど、ゼロウェイストを進める中ではコミュニケーションが必要だと思っています。

ノウハウもシェアし、ネットワークの拡大を目指す

私たちは当初から、ゼロウェイストの量り売り店は日本に1店舗だけあっても意味がないと考えており、全国どこでもこのような店が近くにあるという形を目指しています。そのため、「ゼロから始めるゼロウェイストショップの開業講座」をオンラインで実施して、私たちがモデルショップで得たノウハウを提供しています。これまで100名近くの方が受講し、中には実際にビジネスやお店を始めた方もいらっしゃいます。

卸事業としては、現在はとくに国産の商品を増やそうとしており、ごみを出さずに納品していただく方法を模索しています。さらに、私たちが出会った生産者を、私たちが商品を卸している全国の店舗の方々に紹介料をいただかずに紹介したり、逆に紹介いただいたりして、たくさんの店がゼロウェイストの仕入れをすることができるよう、生産者や小売業者同士のネットワークを広げていきたいと思っています。

ゼロウェイストスーパーマーケットもオープン予定

さらに、大きなプロジェクトとして、一般的なスーパーマーケットとほとんど変わらない食材やアイテムをそろえた「ゼロウェイストスーパーマーケット斗々屋」を、京都で7月にオープンします。すべての商品を個包装は一切せず、食品用として安全性が確認された什器に入れて提供し、欲しい分だけ購入できます。nue by Totoyaでは世界初のプラスチックフリーの量り売り専門什器を日本で初めて取り入れました。

昔の生活に戻るのではありません。大きな、そして持続可能な変化を社会にもたらすには、令和の時代だからこそ可能な、便利な量り売りを生み出す必要があると思っています。今後は、デポジット制のガラス瓶など、リユース容器を斗々屋だけでなく他の場所でも返却できるような仕組みづくりも進めたいと思っています。