特集/セミナー報告 2Rビジネスの新展開~世界の2Rビジネス事例(海外の事例紹介)

2021年04月15日グローバルネット2021年4月号

国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
大舘 弘昌(おおだち ひろあき)さん

 現在、リユース容器による商品提供や容器包装をそもそも利用しない販売など、新たな2R ビジネスの動きが広まりつつあります。そんな中、東京都は2019 年12 月に策定したプラスチック削減プログラムにおいて、「使い捨てを徹底的に見直し、リユースを基調とした社会へ」と掲げています。
 本特集では、2R ビジネスの拡大を加速するため、東京都環境局が昨年11 月27 日に開催したオンライン・セミナー「2R ビジネスの新展開」での講演内容と、紹介された国内・海外の新しく始まっている2R ビジネスの事例について紹介します。なお、一部内容については各登壇者に確認の上、最新の情報に直してご紹介しています(2020年11月27日、オンラインにて)。

 

年間最大1,200万tのプラスチックごみが海に流出しているといわれています。このまま何もしなかった場合、海に流れるプラごみは2040年には2,900万tまで増加し、世界中で今、政府や企業が行っているプラスチック対策が仮にすべてうまくいったとしても、2040年の段階で7%しか流出は減らないとNGO団体のPEW Charitable Trustsは試算しています。

今、世界中でさまざまなリサイクルの取り組みが進められていますが、リサイクルは限定的な対策であり、リサイクルでプラスチックの危機を乗り越えることは不可能だということがあらゆるデータからわかっています。

日本は世界トップ3に入る廃プラ輸出大国です。国内のマテリアルリサイクル率は23%ですが、そのうち国内でリサイクル処理がされているものは13%にとどまっています。それ以外は、主に東南アジアなどの途上国に輸出されていて、これは日本だけでなく他の先進国も同様です。先進国から途上国に送られるプラスチックのごみには、そもそもリサイクルできないものや汚れたものが多く含まれていることで、現地で深刻な環境汚染や健康被害を引き起こしています。

プラスチックの危機を前にして、使い捨て容器包装そのものから脱却していくことが大事であり、これを社会全体で目指していく必要があるのです。

1兆円以上の経済規模を持つリユースビジネス

そこで、大事なのが容器包装のリユースビジネスです。仮に世界の使い捨て容器包装が20%リユース可能なものに切り替わっただけでも1兆円以上の経済規模があるといわれています。もちろん、20%といわず、リユースのビジネスがメインストリームになっていくことが大事です。

英国のエレン・マッカーサー財団がまとめた世界のリユースビジネスの四つのモデルと海外の事例を紹介します。

モデル1:自宅でリフィル

利用者自身が製品を購入し、使用して空になった後、中身だけを自分で購入して自宅で詰め替える。日本では洗剤や液体せっけんの中身をパウチで購入してきて、家で詰め替えるものがあるが、パウチ自体が使い捨てになるので、ここには含まない。

Blueland社(米国)では、せっけん・洗剤などを固形タブレットで販売しています。タブレットと水を混ぜ合わせることで液体せっけんを自分で作れます。タブレットは小さいので、保管するのも省スペースで済むし、輸送やパッケージのコスト削減も期待できます。

Bevi社(米国)は給水機のシステムを事業者側に提供するサービスを行っています。水の給水だけでなく、利用者は給水する際、炭酸やフレーバーを自分で選んで追加するなどカスタマイズでき、ごみの大幅削減が期待できます。

モデル2:自宅で容器返却

商品を購入し使った後、空になった容器は自分で洗浄し、洗浄した容器を持って外で詰め替える。

Algramo社(チリ)は豆や米、洗剤などの量り売りの自動販売機ネットワークを展開しています。町の小さな商店にも量り売りの自動販売機を設置し、利用者は自分の容器を持って行き、好きな量だけ購入できます。パッケージ代がかからず、その分商品自体が安くなるため、貧困層も購入しやすく、社会的ニーズに合っています。

さらに同社は利用者がスマートフォンでアプリを通じて注文すると、自宅の近くまで電気三輪自動車で販売に来てくれるという移動式洗剤の量り売り販売を始めています(写真)。同社の容器にリフィルするというもので、自動認識技術のシステムを導入することで、パッケージ自体がお財布のようになり、自動決済やリピーター割引なども容易にできるシステムです。

Algramo社の電気三輪自動車による移動式洗剤の量り売り販売

モデル3:外出先でリフィル

利用者が注文し、事業者側が商品を配送。その製品を使用した後は、空になったものを事業者が回収に来て新しいものに交換。回収した空容器は事業者側が洗浄し、新しい商品を詰め替えて販売する。

DabbaDrop社(英国)は、食事配送のサブスクリプションサービスを行っています。利用者側は登録し、設定した日時に、リユースできる容器に入った食事を配達してもらい、容器は次回配達時に回収してもらいます。

Dispatch Goods社(英国)やMuuse社(シンガポール)は、提携したレストランへの容器の貸し出しのほかに、オンラインのデリバリーサービスとも提携。利用者自身が食事を注文する際に、その会社のリユース容器を選んで注文することができます。

モデル4:外出先で容器返却

製品を購入・使用後、空容器を利用者自身が購入店や提携店、街の回収ポイントへ返却しに行き、事業者側が洗浄して詰め替える。

Vessel Works社(米国)は提携しているカフェなどにタンブラーを貸し出す事業を行っています。タンブラーはQRコードで管理されているのでトラッキングが可能。利用者は使用後そのまま店舗や回収ボックスに返却し、同社が洗浄します。また、RePack社(米国)は、オンライン通販で注文する際、何度も使える配送パッケージを選び、配送後は郵便ポストから返却するというパッケージを提供しています。

cozie社(フランス)は、化粧品の量り売りを行っています。顧客は店から提供されるブランドのガラス瓶にそのブランドの化粧品を量り売りで入れ、使い終わったらボトルを返却して新しいボトルに変えてもらい、また量り売りをするという仕組みです。

リユースをメインストリームに

リユースの利点について、同財団は、①コスト削減 ②顧客のニーズに適合 ③流通・物流の最適化 ④データの蓄積 ⑤顧客体験を高める ⑥ブランドへのロイヤルティーの向上、の六つにまとめています。

グリーンピースは今年、世界の120名以上の保健衛生専門家の声を集めたところ、使い捨てパッケージだからといって安全ということではなく、リユースや量り売りは、衛生基準を満たすことで問題なく運用することができるということが明確になりました。

グリーンピースが最近行った市民の意識調査では、8割以上が使い捨てプラスチックの容器包装は過剰だと感じていました。日本でリユースをメインストリームにしていく動きをつくっていくことが求められていると思います。

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