特集/セミナー報告 2Rビジネスの新展開リユース容器を利用するLoopの取り組み(2Rビジネスの事例紹介①)
2021年04月15日グローバルネット2021年4月号
Loop Japan 合同会社
エリック・カワバタさん
本特集では、2R ビジネスの拡大を加速するため、東京都環境局が昨年11 月27 日に開催したオンライン・セミナー「2R ビジネスの新展開」での講演内容と、紹介された国内・海外の新しく始まっている2R ビジネスの事例について紹介します。なお、一部内容については各登壇者に確認の上、最新の情報に直してご紹介しています(2020年11月27日、オンラインにて)。
Loopは簡単にいうと、昔の牛乳配達のリターナブル瓶を使うサービスを現代風にしたプラットホームです。2019年1月に世界経済フォーラムのダボス会議で、約12社のブランドパートナーとともに世界中に発表しました。その1年後にはブランドパートナーは200社以上となり、当初30~40種類だった商品は今では世界で500種類以上に増えています。
単独で活動しているわけではなく、小売店と提携しています。2019年5月には米国とフランスで通販サービスも開始しました。日本でも東京都のサポートを頂き、現在25社と契約を結んでいます。2021年春以降に、アジア初のビジネスを開始し、イオンの東京都を中心とした19店舗で始めます。
過去から学ぶ
日本ももともとは使い捨ての容器は無く、例えば牛乳はガラス瓶で配達され、飲み終えた空き瓶は配達の会社が回収し再充填されていました。当時その瓶は会社の資産だったのです。自分の資産なら長く使いたい、長く使うことによってコストダウンもできるのです。
しかし1930年代、アメリカで使い捨ての容器が発明され、安く、便利な使い捨てのものがどんどん増え、再利用できる容器から使い捨ての容器にシフトしたのです。
さらにも、会社の資産だった容器はコストに変わりました。会社のコストになると企業は利益を出さなければいけないのでコストを削減するのです。
こうしてガラス瓶からアルミ缶、ペットボトルに紙パックからパウチまで、安く軽く、と作り替えられてきました。アルミからペットボトル、パウチと原料の価値が下がることで、ますますリサイクルができません。原料価値が安くなればリサイクルコストをカバーできず、損が出るので誰もリサイクルしないのです。
「使い捨て文化」から抜け出すには
リユースを成功させるためには利便性などの使い捨てのメリットと戦わなければいけない、そうしないと使い捨ての生活から抜け出せません。それを考えるとコストは大きな推進力となります。
例えば使い捨ての容器なら10円で作れるのですがステンレスにすると300円かかる。商品価格を高くすると経済的な合理性がなくなりますが、容器を回収して、例えば100回再利用すれば、毎回販売する商品に占める原価コストは3円になり、使い続ければどこかで経済合理性が出てくるのではないかと考えています。再利用するので容器にお金をかけることができ、そうなるとデザイン性も重視するようになり、更に新しい機能も加えることが可能になります。
Loopのプラットホームで、飲料の容器から調味料、スナックフード、ペットフード、洗濯洗剤などの容器などをプラスチックからステンレス製に変えました。
さらに、Loopはメーカーとともに、再利用できる耐久性のある容器を開発し、Loop提携小売店やオンラインサイトを通して商品の販売をします。
日本でも本格始動
日本での店舗内販売については、イオンと提携して始めます。イオンの店舗で商品を買った時に容器の預かり金を払い、容器を返却したら預かり金が戻ってきます。返却された容器はLoopが集めて洗浄し、メーカーに戻すと、商品を充填してまた販売されます。店舗内だけでなく、公共の場所やマンションなど、東京都内で回収場所をさらに増やしたいと考えています。
現在、図2のように小売店や宅配業者、役所、商業施設等を巻き込んだネットワークを構築していくことを考えており、そうすることで再利用の利便性は使い捨てと変わらなくなります。
また、東京都と連携し、2020年12月から21年2月までテイクアウト弁当の実証実験を行いました。東京都内の丸の内・六本木の特定オフィスビル内の飲食店で、リユース可能な容器で弁当を販売し、空き容器を回収・洗浄して飲食店に戻し、弁当容器として再利用します。
3R+Refuse(断る)
3Rに加えて4番目のR「Refuse(断る)」ということを考えてほしいのです。誰でも、個人で世界を変える力を持っています。消費者が使い捨ての物や環境に優しくない商品を買うと、再び同じ商品が棚に並び、終わりがありません。しかし、良い商品を選んで買うと、次には良い商品が出てくるのです。買い物するときには、本当に必要なものか考えてほしい。そうすることによって商品を販売する会社は、消費者の声に対応し、大きな変化をもたらすのだと思います。