フロント/話題と人野口 朋寿さん(tototo代表、富山県氷見市地域おこし協力隊)

2021年02月15日グローバルネット2021年2月号

魚の皮から生まれ変わった「フィッシュレザー」
~地域の資源を無駄にしないものづくりを

野口 朋寿(のぐち ともひさ)さん
tototo代表、富山県氷見市地域おこし協力隊

「ひみ寒ぶり」で有名な富山県氷見市で、廃棄される魚の皮を革「フィッシュレザー」に変え、製品作りを手掛けるブランド「tototo」が2020年4月に立ち上がった。ブランド名は、「魚々ととと一緒に」の意で、設立した野口さんが「魚と人間が共存し、より豊かな未来を創る」という願いを込めて考え出した。

野口さんは小さい頃からものを作ることが好きで、生まれ育った香川県高松市の工芸高校から富山大学に進学、漆工芸を専攻した。卒業研究で趣味の革細工を漆と組み合わせてみようと、いろいろな動物の皮をなめした。鶏の皮も試そうとスーパーに買いに行った際、隣の魚売り場にあったスズキも買ってみたのが魚の皮なめしを始めるきっかけだ。

魚の脂や臭いに悩まされながら失敗の連続。そんな時、氷見市で地元で捕れた魚の皮を使ってサンダルを作るというプロジェクトに出会い参加。釣り名人や漁師、魚屋など地域の多くの人の協力を得ながら試行錯誤を重ね、魚の皮のなめし技術を体得。丈夫でしなやかな「フィッシュレザー」が作れるようになった。

野口さんは皮なめしに一般的に利用される化学薬品(クロム)は使わず、ミモザという植物から抽出されるタンニンを使う。「優しいものを作る過程で環境を破壊したくない」と言う。

2019年11月にはクラウドファンディングに挑戦。自らなめした革を表面に施して製作した財布や名刺入れなどは、目標を大きく超えて集まった支援者の手に届けられ、「想像より丈夫」「活動趣旨に共感した」などの感想をもらった。

一方、野口さんは2018年から氷見市地域おこし協力隊として、氷見の資源から生まれたフィッシュレザーを広める活動も進めている。「地元の多くの方からフィッシュレザーだけでなく自分自身も応援してもらっている。人とのつながりを大切にして、氷見で恩返しがしたい」。

今後は富山湾だけでなく、日本各地で捕れた、うろこ模様の違う魚の皮を使ってみたいという。「地域の魚を使うフィッシュレザー工房が各地にできることが町おこしにつながると良い」と夢は膨らむ。27歳。(と)

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