フロント/人と話題田邉 清人さん
2016年03月15日グローバルネット2016年3月号
世界の温室効果ガス排出量の算定方法を開発する部門の共同議長に選任
田邉 清人さん
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)インベントリータスクフォース共同議長
昨年10月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)インベントリータスクフォース(TFI)の共同議長に選任された。TFIは国際的に合意された温室効果ガスの排出量・吸収量の算定方法を開発し、その普及を行うIPCCの一部門だ。
田邉さんは大学1年生の時、東京・新宿の高層ビルの中で偶然地震に遭遇し、その揺れに不安を感じた。ちょうど進路について心も揺れていた時。これを契機に地球物理学を志すことに決めたという。
1993年に東京大学理学系大学院修士課程を修了後、民間シンクタンクに就職。その翌年に発効した国連気候変動枠組条約の第1回締約国会議に向けた環境庁(当時)の国別報告書作成作業に関わったことが今の仕事につながることになる。その後99年、TFIのための技術支援ユニットが日本政府の支援により地球環境戦略機関(IGES)内に設置されたときから、国別の温室効果ガスインベントリーの作成方法の開発・普及に従事。その後、この仕事を続けていきたいとIGESに転職もした。
インベントリーは温室効果ガスの排出量や吸収量を、排出源・吸収源ごとに示すもので、条約締約国は自国のインベントリーを作成・公表する義務を負う。排出削減目標を達成したかどうかはこのインベントリーをもとに判定される。昨年末に合意されたパリ協定では先進国・途上国を含むすべての国が削減目標に向けた取り組みの進捗状況を報告するよう義務付けられ、インベントリーの重要性はますます高まった。
「パリ協定の柱の一つは透明性。そのカギになる情報の一つが温室効果ガス排出量の報告。各国がより正確な信頼性の高い計算ができるようガイドラインを改善していきたい」という。「とくに、算定の基礎となるデータの不足に苦しむ途上国などが算定能力を高めることができるよう支援したい」と意欲的だ。
「音がKYOTOに近い名前(清人)は外国で受ける」と笑う。その京都で温暖化に対応すべき内容が定められて19年。世界はようやく一丸となって温暖化に立ち向かう決意を固めた。挑戦が実を結ぶかどうか。田邉さんの貢献が期待される。47歳。
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