会長メッセージ

節度ある人間活動が求められる21世紀

一般財団法人 地球・人間環境フォーラム
会長 岡崎 洋

波をぼんやりと眺めた敗戦の夏の海

湘南の海。サーフボードを小わきに抱えた若者たちの姿を見ると、海の思い出がにわかに鮮明になります。
「われは海の子 白浪の さわぐいそべの松原に」と、私の少年時代は文部省唱歌さながらの夏の日々でした。白いシャツにふんどし。手ぬぐい一本もって自転車に飛び乗り、浜に急ぐ。土用波にほんろうされ、潮の流れで沖に引きずり出されそうになるのをなんとか振り切って、やっと浜辺まで泳ぎ帰る。熱い砂の上に寝ころんでひたる安ど感は、格別の味わいでした。
敗戦の夏の終わり。砂山に座り込んで、寄せる波をぼんやりと眺めていました。相模湾はアメリカの艦船で黒々と埋め尽くされていました。その後に続く戦後の荒廃と飢餓の中を、私たちの世代はほとんど無我夢中で生きてきたように思います。

お金の力を背景にした傲慢な対応

こうして、戦後六十年余の歳月が過ぎました。そうして今日、日本人が手にした経済的な豊かさを見るにつけ、よくもここまで伸びてきたものだと、感慨もひとしおです。しかし、経済の豊かさが、そのまま人びとの心の豊かさ、ひいては真の喜びにつながっていないことに、もどかしさを感じています。
日常生活での体験をとおして、あるいは政治や経済で脚光を浴びている人びとのたたずまいを見るにつけ、お金の力を背景にした傲慢な意見や対応、他の人の立場や心情を考えてみようともしない自己主張に嫌悪を覚えることが、年を追って増えてきたような気がします。

思遣之心で節度ある人間活動を

「思遣之心おもいやりのこころ」という言葉があります。自然の保護、生態系の維持のためにも、この思い遣りの心は欠かせません。人間は太古の昔から、絶えず自然に働きかけ、自然を利用し、改変することによって生活水準の向上を図ってきました。
今はもう、そういう時代ではなくなりました。科学技術の力を抑制することなく駆使すれば、自然破壊としか表現しようのない状況が現出してしまいます。かけがえのない自然の維持、地球規模の環境の保全を進めるために、21世紀を生きる私たちには、他を思い遣る心に支えられた節度ある人間活動が求められていると思うのです。

作成日:2017年02月01日 16時26分
更新日:2017年02月11日 19時56分