Environmental Report Awards 2003 |
「第7回環境レポート大賞」の受賞作品の決定及び
|
事 業 所 名 |
報告書タイトル |
大阪ガス株式会社 |
■持続可能性報告大賞(環境大臣賞) 1点
事 業 所 名 |
報告書タイトル |
三菱商事株式会社 |
■環境報告マイスター賞 4点
事 業 所 名 |
報告書タイトル |
株式会社西友 <通算5回受賞> |
|
トヨタ自動車株式会社 <通算4回受賞> |
|
日本電気株式会社 <通算5回受賞> |
|
松下電器産業株式会社 <通算4回受賞> |
■環境報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 11点
事 業 所 名 |
報告書タイトル |
東京都板橋区 |
|
キヤノン株式会社 |
|
コクヨ株式会社 |
|
サントリー株式会社 |
|
セイコーエプソン株式会社 |
|
積水化学工業株式会社 |
|
株式会社東芝 研究開発センター |
|
東陶機器株式会社 |
|
日本精工株式会社 |
|
富士通株式会社 |
|
三菱地所株式会社 |
■持続可能性報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞) 6点
事 業 所 名 |
報告書タイトル |
株式会社イトーヨーカ堂 |
|
株式会社INAX |
|
ソニー株式会社 |
|
株式会社損害保険ジャパン |
|
フォルクスワーゲングループジャパン株式会社 |
|
富士ゼロックス株式会社 |
■奨励賞 6点
環境報告奨励賞 2点 |
|
ソニーイーエムシーエス株式会社木更津テック |
|
電源開発株式会社水力流通事業部 奥只見・大鳥増設建設所 |
|
業種別奨励賞 4点 |
|
株式会社NTTドコモ北海道 (通信業) |
|
王子製紙株式会社 (製紙業) |
|
新日本製鐵株式会社 (鉄鋼業) |
|
日本政策投資銀行 (銀行業) |
環境行動計画部門
■大賞(環境大臣賞) 1点
事 業 所 名 |
行動計画タイトル |
太閤山観光株式会社 |
■優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞) 2点
事 業 所 名 |
行動計画タイトル |
住金セラミックス・アンド・クオーツ株式会社 |
|
ソーダニッカ株式会社札幌支店 |
第7回環境レポート大賞 講評
[環境報告書部門]
■環境報告大賞(環境大臣賞)
この報告書は、詳細かつ丁寧な情報開示がされバランスよく幅広い内容をカバーしている。事業活動における環境負荷、製品における環境負荷、地域における環境改善の3分野でまとめ、複雑な環境対応を理解しやすい構成となっている。都市ガス事業における環境負荷の全体像では、天然ガス田掘削時の環境負荷からカバーしており、幅広い範囲まで目配りしている点が評価できる。家庭などでの燃料電池の開発普及にはガス会社の役割は大きいと思われるのでもう少し大きく取り上げ、それについての方針、コミットメントの記載が望まれる。
上記に加えて、ガスの安定供給をガス会社としての社会的責任として捉え、誠実に情報開示・コミュニケーションを図ろうという姿勢が読み取れるものとなっている。欲を言えば供給サイドには政情不安定な国もあるので、サプライチェーンにおける配慮という視点が入ると、かなり先進的な取り組みとなろう。
■持続可能性報告大賞(環境大臣賞)
◆三菱商事株式会社「サステナビリティ・レポート2003」
グローバリゼーションの中で、サステナビリティへの取り組みは日本独特の総合商社に多くの期待がかかっている。本来業務における地球環境、社会性、環境技術に対する支援に関するビジネスについての記述、事業投資の環境影響評価について対象企業数やレビュー件数の目標及び実績値の記述がなされているとともに、本業外における社会貢献活動に関する取り組みに関する記述が持続可能性を踏まえたかたちで成されている。トリプルボトムライン(経済・社会・環境)それぞれに対しての目的・目標が自社内の記述にとどまらない、業種特性を十分活かした内容で記述されており、経営者コミットメントを最大限網羅したかたちでの報告内容であると認められる。
欲をいえば環境パフォーマンス評価の部分を指数による評価に実数値を加える等により更なるグレードアップが図られると考える。
■環境報告マイスター賞
◆株式会社西友「西友サステナビリティ・レポート2003」<通算5回受賞>
サステナビリティレポートとして、経済、社会、環境の3つの側面から情報が網羅されている。注目の米国ウォルマートの資本参加については、新しい組織体制や経営方針などを十分に説明している。経営権がかわる中で従来の良い面と、新しい親会社の良い面を融合させようとする試みであり真に根付かせることが今後の課題であろう。不祥事についても経過説明と再発防止に向けた取り組みを明記し、社会への説明責任を果たそうという姿勢が感じられる。
環境面においては、企業内環境税「ECO TAX」で環境負荷の削減を進めていることは評価できるが、できれば支店ごとの集計結果も掲載してほしい。一般の消費者が読みやすく、理解しやすいように写真や図表などで工夫し、親しみやすい報告書となっている。
◆トヨタ自動車株式会社「Environmental & Social Report 2003」<通算4回受賞>
自動車製造事業者として、環境側面を的確に捉え詳細に記述している。また連結マネジメント報告は評価できる。企業市民としてのコーポレートガバナビリティ、持続可能性、CSRについても記載されており、今後の「持続可能性報告書」への発展性がうかがわれる。環境面での記述については改善点は少ないが、「流通」関係取り組みの記述の更なる充実が望まれる。
また、「Special Story」については、全体的にまじめな本報告書の記述論調とは異質であり、賛否両論がある。今回とりあげられているテーマはグローバルなサステナビリティの関係から言えば極めて重大な事項であり、コミットメントと取り組みしだいでは企業評価に極めて有益に作用するものである。今回は、広報宣伝的な書き方で、理解不足の独りよがりの記述が目立ち、報告書というより雑誌の紹介記事といったイメージを与えていることはマイナスであろう。
◆日本電気株式会社「NEC環境アニュアルレポート2003」<通算5回受賞>
環境アニュアルレポートに「持続可能な社会に向けて」との副題がついた報告書となっていて、環境関係の報告に加えて企業倫理、顧客や従業員、地域に対する社会的責任に関する情報も記載されているのは評価できる。
さまざまな状況にある読者に対し、冊子のほかダイジェスト版、ホームページを用意し、冊子の発行に当たっても環境配慮(節紙)に努めているのは好感が持てる。
事業に関連する環境負荷を二酸化炭素排出量という、一面ではあるが調達段階から顧客の使用段階に至るライフサイクルで把握・紹介しているのは、環境改善評価の基礎をなすもので評価される。
環境報告書は読まれて初めてコミュニケーションが開始される。そういった意味で、図表やイラスト、カラーを多用し、ステークホルダーマークを用意し、多忙な現代人のニーズに応えようとしている、優れた報告書の一つである。
◆松下電器産業株式会社「松下電器グループ 環境経営報告書2003」<通算4回受賞>
グローバル企業にふさわしい、グローバルベースでの報告の構成になっている。また、自社(グループ)の負荷割合が把握されている点も評価できる。環境活動の全体的に渡って網羅的に情報を公表しており、環境活動への取り組みのパフォーマンスが、取扱の商品を主体に充実していることが理解できる。活動について詳細かつ、マイナス情報も含めて具体的な情報を記述しており、優れた環境報告書である。企業グループ自体としても巨大であるためサイトの情報も含めて資料量も膨大であるが、情報公開として評価できる。
ハイライトに多くのページが割かれているが、読者の中には環境報告書というより、環境広報誌とみる人もいるかもしれない。製品情報などは、ややPR色が強く、ステークホルダーの読みやすさとしては、もっと割愛することも必要であろう。色使いの多さについては賛否両論あることを付記しておきたい。
■環境報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)
◆東京都板橋区「板橋区環境マネジメントシステム 平成14年度実施結果報告書」
地方自治体が把握している重要な環境側面に関する記述について、環境保全項目の確実な把握とそれらに対する目標、達成度、進捗率及び改善指針について具体的な数値や指数で記述されており、経年的に取り組みがなされていることがうかがえる。自治体の環境主要業務である家庭系のごみについて記述があまりないことが気にかかる。行政域内事業者に対するマネジメントシステムの普及、環境関連産業育成に関する記述も認められ自治体が地域に果たす役割を含めているのは評価できる。事業系一般廃棄物対策なとについての施策等についての記述があればもっと良い。
自治体と地域住民やNPOとのコミュニケーションや協働、組織内での社会面関連記述を充実することにより更なる飛躍の余地はあるが、当報告書は全国の地方自治体が報告書を作成する範となり得るものと評価できる。
◆キヤノン株式会社「キヤノン サステナビリティ報告書2003」
全体的に環境活動について網羅的に記述されており、特に連結ベースの報告は評価できる。環境負荷の現状を円グラフで示し、LCA分析により把握した上で、自社の課題を総括している点はわかりやすい。課題を明確に表現することは、それに向かって取り組むというコミットメントとしても理解できるので期待したい。
ハイライトにページを取られすぎた感じがあり、環境報告書として環境活動の地道な取り組みをわかりにくくしている。実績評価には大幅な未達成の部分があるが、原因についての説明がなくはっきりしない。こういうところの詳しい説明が必要と考える。
既に何社かで試みられているものではあるが、マテリアルフローコスト会計への今後の更なる取り組みに期待する。
報告書全体のレイアウトを縦書きにするなどユニークなデザインで読者を飽きさせない努力が見られる。これは、他の企業への良い見本になる報告書である。雑誌のような感覚で大きな見出しをつけ自社の取り組みを紹介している工夫は読者に対して分かりやすさ、入りやすさを配慮している。環境問題への取り組みでは、グループを対象にした中長期行動計画を基にその目標と実績を開示している点も評価できる。環境会計やグリーン調達・購入は、行政のガイドラインや法律に準拠しているだけではなく、自社独自の工夫を凝らしていることも優れている。更にCSRを重視した社会性の情報が部分的に開示されている。今後はサプライチェーンマネジメントやステークホルダーとのコミュニケーションについての情報開示が望まれる。
本報告書のタイトルは「環境レポート」となっているが、CSR経営を認識した環境保全と社会性事項について要領よくコンパクトにまとめてあり、作成者の誠意が伝わってくる。編集方針も明確であり、読みやすく構成されている。巻頭部分に読者へのアピールポイントとして、持続可能な経営の考え方、安全・品質保証、コンプライアンス経営体制、中期目標と当該年度の実績評価などが明示されているのは良い。ただし、方針と中期目標、具体的取組の整合性についてはわかりにくい所がある。たとえば、物流での取り組みは重要であるが、これが中期目標のなかでどうとらえられているのか見えない。環境負荷データについては、ライフサイクル全体における各段階での排出量と原単位さらに結果の要因分析を行っており、取組の質の深さを感じる。社会性事項の実績については、一部定量的データもあるが、全体的には取組内容の解説が多いので、今後具体的なデータの充実が望まれる。
◆セイコーエプソン株式会社「サステナビリティレポート2003 2002.4-2003.3」
やや抽象的だが、経営者の「ごあいさつ」で、明確にコミットメントを表明している。工場立地と工場運営でも、環境配慮が「当然の責務」であると明言されている点を評価する。工場立地については、記載している会社は少なく、その面でもよい事例である。
報告範囲は連結を基本としており、商品リサイクル、調達など、データ・定性的情報とも比較的よく開示され、多岐にわたるデータについて、グラフをうまく活用し、見やすい記載が工夫されている。各対策については、背景、取組理由が比較的はっきりと、C2F6排出量削減、省エネ、温暖化防止など定量的に説明されており、達成度の分析と今後の対応へとつながる形で記載されている。定量化のため環境経営指標の導入を試行しており、今後の進展に期待したい。
事業活動と負荷の定性的・定量的な説明については、物質収支だけではわかりにくい。工夫が望まれる。内部監査における指摘問題点、改善対策などの具体的な記述があればもっと充実するものと考える。
◆積水化学工業株式会社「環境レポート2003」
これまでの経験を踏まえて、環境創造型企業をめざすという明確なコミットメントがなされている。
カンパニー毎に事業内容・環境影響が異なるという特性をふまえ、全社編と各カンパニー編という構成を採用しており、カンパニー編は特徴的な点に絞ることで重複を避けるとともに、各カンパニーの違いを説明することで、事業内容と環境の取り組みの焦点や方向性を理解させるよう工夫している。とはいえ、情報量が多くなり、読者によっては読みにくくなっており、もう一段の工夫があると多くのホールディング・カンパニーにとって大いに参考になろう。
前年のレポートに関する主な意見と回答が書かれた箇所からは、意見を受け止め、改善に努力していることがうかがわれる。増減理由、今後の対応など、文章で丁寧に説明しつつ、グラフに数値を記入するなど、定量的情報の開示という点でも、同業他社に比べ優れている。
◆株式会社東芝 研究開発センター「環境サステナビリティ報告書2003 「こちら中学校編集局〜企業はどう環境と向き合っているのだろう?〜」
本報告書は地域の中学生との共同編集を試みられており、一般市民にとっての分かりやすさに配慮した説明が随所に見られる。平易な表現というだけでなく、事業所と環境との関わりや環境保全活動の必要性等についての本質的な疑問に対して、適切な回答が得られる。特に、環境負荷の全体像、各業務の環境影響評価の仕組みとそれによって抽出されたテーマの重要性については、具体的かつ分かりやすい説明が行われている。
また、環境パフォーマンスデータやネガティブな情報、環境リスクに関わる情報の開示も充実している。本報告書は、サイトレポートの領域を超えて、対話型の環境コミュニケーションの好事例として推奨できる報告書である。
情報が豊富に記載されており、そのうえ全体的な取り組みと個別の取り組みが目次でリンクしており、読みやすく工夫されている。成熟した製品分野だが、さまざまな視点から環境に配慮した新製品研究を行なっており、自社のエコ商品基準も設けている。今年から新たに環境法令とその対応についての記載が加わっている。昨年のレポート以降のフィードバックもあり、事業内容、レポート自体ともに年々改善されており、今後にも期待が持てる。自社商品を使う事による各家庭の環境保全効果に着目した事は評価できるが、データがチャート中心で読みにくい。今後、記載内容、方法の充実を期待したい。
同社の主製品であるベアリングそのものを、環境製品と位置づけて、その効果を強く印象付けて展開している。構成も、EMS、製品、コミュニケーション、各サイト活動に区分することで、よく整理された報告書となっている。
また、グループ企業サイトの環境保全活動も要領よくまとめてある点も評価したい。更に、ゼロエミッションに関して、自社だけでなく、関連会社、サプライチェーンに拡大して活動していること、物流においても、サプライチェーンとの間でミルクラン(複数の積荷発送元や輸送先の間を輸送便を循環運転する、牛乳配達のような輸送方法)の採用など、細かい点にも環境配慮が図られていることも評価に値する。サイトについて取り組みもコンパクトにまとめてあり、この規模でB to Bビジネスの企業にとってひとつの典型例となる報告書である。
◆富士通株式会社「2003 富士通グループ 環境経営報告書」
報告書はまず富士通が目指すサステナビリティ経営について紹介すると共に、環境保全活動について報告し、経済的、社会的責任に関する活動状況を報告している。しかも優れているのは経済面で環境会計に触れ、社会面においては環境コミュニケーション、安全衛生の状況など、環境・経済・社会の相互関係を認識し、関連づけて報告している点である。パフォーマンスの記述が多いことは評価されるが、基になる経営方針およびそれに対するコミットメントが見えれば更に良い。
報告は環境に傾斜しているが、事業に関連する主要な環境負荷を調達段階から顧客の使用段階に至るライフサイクルで把握・紹介しているのは、環境改善評価の基礎をなすもので評価される。また、製品サービスにおける活動状況もさまざまな成果の報告だけに留まらず、資料編にグリーン製品評価規定を掲載するなど環境活動について学ぶにも役立つ、優れた環境報告書である。
グループ各社の異なる事業を、総合不動産業として、「まちづくり」=「コミュニティの創造」の視点からとらえ、環境対応のみならず、社会的な配慮の面を包括することで、持続可能性のコンセプトに一致させている。
丸ビル特集については、ビルとオフィスコミュニテイの環境対応を包括的に報告しており、啓蒙効果のある読み物としても面白い。また各事業の環境対応については、性格の異なる事業ごとの目標と実績を同一フォーマットで報告する努力がみられ、すっきりしていてわかりやすい。内部監査の結果やシックハウス、土壌汚染など、ネガティブな情報も開示されている。社会性報告についてはトピック紹介的要素が強いが、さまざまなステークホルダーとのコミュニケーションという構成でもって、複雑な問題をわかりやすく整理している。またグループ各社のトップによる今後の事業戦略・環境戦略コメントもグループ全体の情報を包括的に開示しようという姿勢が見えて好感がもてる。
■持続可能性報告優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)
◆株式会社イトーヨーカ堂「企業の社会的責任報告書―社会・環境活動報告2003 Corporate Social Responsibility Annual Report 2003」
企業の社会的責任報告書として、行動指針のみならず、CSR会計も公表し、大変充実した内容となっている。また、ホームページ上でGRIガイドラインとの対照表を掲載して、自己分析までも公表していることは高く評価できる。地球温暖化についての独自の指標による分析・評価を行っていることや、従業員の子育て支援や女性の能力が発揮できる職場創出への取り組みなど、オリジナリティのある記載についても評価したい。ステークホルダーごとの紙面構成、わかりやすい図やグラフなど、読みやすいようにさまざまな工夫も多い。ただ、事故などのデメリット情報の記載がないことが気になる。ステークホルダーとのコミュニケーションの取り組みも今後期待したい。
◆株式会社INAX「Sustainability Report 2003 真の企業市民であり続けるために」
今年度から環境レポートからサステナビリティレポートに名称を含め内容を変更させた報告書となっている。そうなると、経済・社会・環境報告の体系性や社会性パフォーマンス開示の状況が問われることになるが、「就業状況と諸制度」の項で他社にはあまり見られない就業時間、工場閉鎖報告が開示されているのは特筆に価する。育児休業制度についても復職人員の開示は企業姿勢がよく読み取れる。労組委員長のコメント記載も開示内容の信頼性を示す一端である。サステナビリティレポートにおける環境報告で重視されるべき環境経営指標の設定、開示もあり、今後の運用が期待される。
◆ソニー株式会社「Corporate Social Responsibility Report 2003 −社会・環境活動報告」
報告書は社会・環境活動報告と銘打っているが、英文名称のごとく内容は環境責任を中心とした社会的責任報告書である。そのため最重要事項として環境マネジメント体制の上位体制としてのコーポレートガバナンス機構とコンプライアンス統括機能に言及していることは、第三者による検証報告書掲載と同様に報告書の信頼性を高めることとなっている。社会的側面についても顧客を第一に、社員、調達先、コミュニティと重要なステークホルダーに関する対応や取り組みを体系的に報告しているのは評価される。製造業のサステナビリティ報告書として一歩進めたものといえる。
環境報告では、さまざまなデータの開示の形は取らないで、精選したデータとその集計方法や考え方を紹介し、読者の理解を深める工夫やホームページのURLだけでなく掲載内容を紹介するなど、巨大企業の環境報告書のひとつのまとめ方を提示していて、優れた報告書となっている。
◆株式会社損害保険ジャパン「損保ジャパン 社会・環境レポート2003 〜Sustainability Report〜」
業種特性を活かした、持続可能な社会の実現のための製品環境配慮、エコファンドや保険、リスクマネジメントサービスに関する記述が充実しているとともに、環境パフォーマンス情報における目標と実績に関する具体的な記述、コミュニケーションや信頼性確保に関する詳細な記述もあり、経営者コミットメントを最大限網羅したかたちでの報告内容であると認められる。企業内における社会性についての記述も意欲的。併せて、文字と図表のデザインバランスを工夫しており見やすさ、読みやすさが追求されている。
◆フォルクスワーゲングループジャパン株式会社「Volkswagen 環境レポート2001/2002年 モビリティーと持続可能性」
全体を通じ、説明が具体的かつ論理的になされている。事業戦略が明確に示されており、持続可能性への取組との関係が理解しやすく、報告書を説得力のあるものとしている。特に、労務面においては、会社の方針・姿勢とともに、社会背景もよく説明されている。経済的側面についても、アニュアルレポート的ではなく、サステナビリティレポートの説明として工夫されている。環境面についても、主要な情報は記載されている。まとめ方が個性的であり、バウンダリーの説明等が弱いものの、参考となる部分も多い。
日本の読者向けには、国内問い合わせ先の追記(別紙でも)や日本での活動(販売台数、代理店)等の情報がほしい。フォルクスワーゲンAGの邦訳版をフォルクスワーゲンジャパン?の「環境報告書」とすることは、日本の読者の立場からするとなにか日本本社としての環境の取り組みが見えない。今回は、初の持続可能性報告書賞なので選定されたが今後のキーポイントである。
◆富士ゼロックス株式会社「社会・環境報告書 2003」
環境活動は網羅的に充実していることが良く理解でき、環境報告書としては記述内容が充実しており、優れた報告書として評価できる。特に、製品における使用済部品の再生部品の利用や、プラスチック材料のマテリアル・リサイクルの取り組みなど環境活動自体の先進性が理解でき評価される。環境効率指標で2004年まで目標を立てている点は評価できる。
富士ゼロックスの社会的責任項目は、GRI(Global Reporting Initiative)が提唱しているものとは異なり、経済同友会が進めている企業評価基準にのっとって記述している点が目新しい。
『組織運営』、『お客様』、『従業員』ならびに『社会・地域とのコミュニケーション』に区分し、報告書全57頁中14頁の25%を社会性項目に割いて力が入っている。しかし具体的にデータが不足しており、今後の課題である。
■環境報告奨励賞
◆ソニーイーエムシーエス株式会社木更津テック「社会・環境報告書 2003」
本報告書は、サイト単位での環境報告と社会的責任報告を二本柱としており、今年度のサイトレポートにおける取り組みとしてはユニークな事例である。環境面の報告においては、事業所内で発生する環境負荷の他、製品設計、アフターサービス、グリーン調達、物流の各項目について具体的目標と達成状況が示されている。サイトレポートとして極めて完成度の高い作品である。
社会的責任に関する報告では、商品の安全性、顧客満足、社会貢献、職場・労働環境、教育・研修という主要テーマを設定し、自社のリスクを認識した上で対策の内容を記載している。今後は、環境負荷の全体像と同様に、社会的責任を体系的に示し、行動計画を伴う報告が期待される。
◆電源開発株式会社水力流通事業部 奥只見・大鳥増設建設所「奥只見・大鳥発電所増設工事における環境保全への取り組みの実績 −環境報告書 2003−」
本報告書は期間限定で設置される事業所事業に対するものである。注目すべき記載として周辺の環境要因、例えば自然生態系、景観、廃棄物、水系といった側面に対する環境影響評価(モニタリング調査)実施に関する記述が豊富なことが挙げられる。発電所増設という事業特性からみた場合に最も影響域住民等が注目すると予想されることであり評価できる。また、報告書の製作にあたり、大学生(研修生)の視点を加えるなどコミュニケーションツールとしての工夫がなされている。
環境報告書という総合視点からは更なる飛躍の余地が残されているが、同種の事業における環境報告書のあり方を問う先駆的な取り組みである。
■業種別奨励賞
◆株式会社NTTドコモ北海道「NTTドコモ北海道グループ 環境報告書2003」<通信業>
同社は環境ビジョンを明確にして、これをもとに活動を展開している。その中で、環境コミュニケーションとゼロエミッションへの取組みに、特に力を入れている事が良く分かる報告内容となっている。台数が伸びているので電力消費が急増しているのはやむを得ないといえども気にかかる。もっと急速に風力などの自然エネルギーの導入を抜本的に検討し、報告書に記載されることが望ましい。
身近な携帯電話のリサイクルの詳細が、消費者へプレゼンテーションされることは、企業の説明責任ツールとしての報告書の効果的な活用例である。また環境会計等も、コスト面だけでなく保全効果も算出し、記載されている。ゼロエミッション達成も1年早く前倒しで目標に至ったので、今後も息切れせぬよう、適切な目標を定めて挑戦してゆくことが大切である。
◆王子製紙株式会社「王子製紙グループ 環境報告書2002」<製紙業>
報告範囲を王子製紙グループに拡大したことは、大変評価できる。森のリサイクルについては、報告書で5ページを割いて、地域に密着した海外植林プロジェクトを紹介し、更に京都議定書及び植林による二酸化炭素の固定量を踏まえた二酸化炭素の2010年の削減目標も掲載されており、製紙業として積極的に地球温暖化防止に取り組んでいることが理解できる。また市民を巻き込んだ割り箸回収の取り組み(グランドワーク活動)は大変ユニークで、これも製紙業らしい身近な活動と言える。しかし、環境教育、内部監査、緊急時対応、そしてグリーン調達などに関しては、記載内容の更なる充実が望まれる。
◆新日本製鐵株式会社「新日本製鉄 環境報告書 2003」<鉄鋼業>
同業他社に比べ、環境マネジメントシステム、環境パフォーマンスに関する項目の両方とも、比較的まんべんなくカバーされている。目標と実績が明瞭に示され、環境側面や環境会計など、単に図表を掲載するだけでなく文章によって丁寧に説明されている。しかし、他業種に比べ、環境監査の結果、読者や第三者の意見を受けての対応など、書きこみが弱い部分、省エネについて前年より悪化しているので、その点についての説明などが改善されればもっと良い。工程プロセスについてではなく地球規模的システムについての取り組みのポテンシャルを持った企業なので、バックキャスティング的な手法を取り入れた方針・目的が示されると迫力のある報告書となろう。
◆日本政策投資銀行「日本政策投資銀行 社会環境報告書 2003」<銀行業>
本報告書は、持続可能な社会に貢献するであろう、環境及び社会分野における先駆的プロジェクト等に対する投融資を積極的に行っていることが詳細に記述されている。社会環境報告書としてのバランスを考えたとき、環境的側面の記述においては更なる飛躍の余地を残すかたちでの報告内容となっているが、環境報告書又はサスティナビリティ報告書作成の面において銀行業界をリードする役割を十分果たしているものと認められる。
[環境行動計画部門]
■大賞(環境大臣賞)
図表・写真・イラストが効果的で、毎年継続して環境取り組みのレベルを上げていることが読み取れる計画書である。継続的改善の手本となる取り組みを公表しており、この規模の企業で、この実績を積み上げていることに敬意を表したい。使用量だけでなく経費節減効果としても表現しており、水道光熱費が2年間で1000万円削減されている点は他社への良い手本なるであろう。農薬の使用抑制や刈芝の堆肥化、利用客の環境負荷低減のための働きかけ(「あいのりキャンペーン」など)を行っていることも評価できる。ますます、創意工夫こらして、全国の参考になり続けることを期待したい。
◆住金セラミックス・アンド・クオーツ株式会社「2003年〜2005年第二ステージ 松任本社工場 環境行動計画:EA21」
業種に対して適切な環境負荷項目を選択し、把握した実績に基づいて適切な目標設定がなされている。また、目標に対する取組みがユニークかつ多彩な点が高く評価できる。例えば、省エネルギーではトランスの整理統合、照度測定に基づく最適照明、天窓遮熱フィルム、井水散水システム、太陽熱反射塗装など、廃棄物では専門業者等と連携した有効利用策(工具、包材・緩衝材等)と再生品の利用、節水では循環式洗浄ラインへの改造などが特筆される。
課題としては、二酸化炭素排出量の内訳を示すこと(電力は増加、二酸化炭素排出量は減少、減少要因が不明。)、表−1と表−2の数値が不一致であること、汲み取り以外の排水量の把握(水のマテリアル・バランスを示す)などが挙げられる。
◆ソーダニッカ株式会社札幌支店「ソーダニッカ(株)札幌支店 環境行動計画書」
北海道にある商社という性格上、輸送及び暖房燃料による環境負荷が大きいことに対応して超低排出ガス車への切替や省エネ型ボイラーの検討などが挙げられている。また、取扱商品である化学製品等の環境負荷についても考慮され、営業面での環境配慮活動等に反映されている。所在する自治体の環境基本計画にも目をむけていることなども評価できる。しかし、公表するからには事業内容についての具体的な記述と、それから発生する環境負荷との関連についての言及がほしい。