1992年6月、ブラジルのリオデジャネイロで、180カ国が参加し、約100カ国の首脳が出席して、「環境と開発に関する国連会議(UNCED, United Nations Conference on Environment and Development、以下「地球サミット」)が開催されました。 これは、地球規模の環境問題が、人類の生存基盤である地球環境に大きな脅威を与えつつある中、地球上には貧困、飢餓、病気に苦しむ人々も多く、人類の未来にとって、地球上の諸活動を持続可能なものにし、地域発展と環境保全との両立した社会を構築していくことが緊急の課題となってきたことを背景にしたものです。  この会議では、「環境と開発に関するリオ宣言」「アジェンダ21」「森林原則声明」が採択されたほか、「気候変動枠組み条約」「生物多様性条約」への署名が行われました。  このうち、アジェンダ21は、同会議で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」の実現のための行動計画として策定されたもので、世界が直面している環境と開発に関するあらゆる問題を幅広く捉えた膨大な文書であり、1000を超える数多くの行動をとりまとめたものです。 このアジェンダ21の第28章(「アジェンダ21の支持における地方公共団体のイニシアティブ」)では以下のように述べられています。


行動の基礎 28.1 

アジェンダ21で提起されている諸問題及び解決策の多くが地域的な活動に根ざしているものであることから、地方公共団体の参加及び協力が目的達成のための決定的な要素になる。地方公共団体は経済的、社会的、環境保全的な基盤を建設し、運営し、維持管理するとともに、企画立案過程を監督し、地域の環境政策、規制を制定し、国及び国に準ずるものの環境政策の実施を支援する。地方自治体は、その管理のレベルが市民に最も直結したものであるため、持続可能な開発を推進するよう市民を教育し、動員し、その期待・要求に応えていくうえで重要な役割を演じている。

目 標 28.2 

このプログラム分野のために、以下の目標を提唱する。

 

(a) 1996年までに各国の地方公共団体の大半は地域住民と協議し、当該地域のための「ローカルアジェンダ21」について合意を形成すべきである。
(b) 1993年までに、国際社会は地方公共団体間の協力の増進を目的として協議を開始すべきである。
(c) 1994年までに、都市その他の地方公共団体の協議会の代表は、地方公共団体間の情報や経験の交換を促進することを目的として協力及び調整を強化すべきである。
(d) 各国のすべての地方公共団体は、女性及び青少年が政策決定、企画立案及び実施家庭への参加を保証することを狙いとした計画の実施及び追跡監視を行うことが推奨される。



 

 

地球サミットにおいては、「持続可能な発展sustainable development」という考え方がはっきりと打ち出され、これは現在、国際社会の合意として定着してきました。地球サミットで採択されたアジェンダ21においても前文において「環境と開発を統合し、これに大きな関心を払うことにより、人間の生存にとって基本的ニーズを充足させ、生活水準の向上を図り、生態系の保護と管理を改善し、安全でより繁栄する未来へつなげることができる」と記述されています。 持続可能な発展とは「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすこと」 とされており、地球環境が有限であることを認識し、その限られた環境の中で人々の生活の質的改善を継続的に達成していこうとするものです。  ローカルアジェンダ21の策定キャンペーンを行っているICLEI(International Council for Local Environmental Initiatives、国際環境自治体協議会)では、ローカルアジェンダ21を次のように定義しています 。


地域の持続可能な開発の優先課題に対応する長期戦略行動計画の準備と実施を通じて、アジェンダ21の目標を地域レベルで達成するための市民参加型のマルチセクタープロセス ( Local Agenda21 is a participatory, multi-sectoral process to achieve the goals of Agenda 21 at the local level through the preparation and implementation of a long-term, strategic action plan that addresses priority local sustainable development concerns.  )



ここでは、ローカルアジェンダ21として策定された成果物である「行動計画」そのもののみならず、その策定プロセス、実施プロセスをも含めています。言い換えるとローカルアジェンダ21は、持続可能な社会の実現をめざし、地域の各主体(地方公共団体、住民、企業、各種団体など)が共通の地域の社会像を共有し、そのための行動計画を策定していくこととなります。換言すれば、「ローカルアジェンダ21」と題した冊子が完成しているかどうか、またその完成度自体もさることながら、そのプロセスにいかに多くの主体を取り込んでいったか、また策定プロセスに参加した主体がいかにこれを実施していくことが問題となります。