当財団 森 史 研究員が日本微生物資源学会 技術賞を受賞

2019年08月19日お知らせ

授賞式の様子

森研究員

2019628日、当財団研究業務部の森 史(ふみ) 研究員が、日本微生物資源学会第26回大会(山梨大学)において日本微生物資源学会 技術賞を受賞しました。技術賞は微生物およびこれに準ずる培養生物の管理、及び系統保存技術に貢献したものに授与されるもので、「NIESコレクションにおける微細藻類の凍結保存法による保存体制の確立」に寄与したことが評価され、受賞に至りました。

微細藻類の多くは継代培養法によって維持されています。この保存法は、特別な設備を必要とせず、操作も単純です。しかし、定期的な植え継ぎや培養液交換が必要とされるため、培養株数の増加などに伴って多大な労力が必要になります。また、植え継ぎの際に他の培養株やカビなどの微生物を混入させてしまう可能性やミスラベルの危険性も残ります。長期間にわたり世代を重ねることで、培養株がもともと持っていた性質が変質してしまうこともあります。

この度技術賞を受賞した、液体窒素を用いて藻類細胞を生きたまま凍結する凍結保存法は、継代培養法で生じるこれらの諸問題を大幅に軽減することが期待されます。

森研究員は1996年に当財団研究業務部の研究員に着任後、国立環境研究所(NIES)藻類カルチャーコレクションの実務担当者として、微細藻類の維持管理に携わり、継代培養をはじめとする基本業務の他、凍結保存法の検討を精力的に行ってきました。微細藻類は原核藻類のシアノバクテリア(藍藻)をはじめ、緑藻、紅藻など広い生物群に渡るため、個別に対象生物の培養齢、凍結速度、凍結保護剤、細胞密度、解凍後の培養方法などの凍結条件と蘇生率を調べる必要があります。

森研究員はシアノバクテリア株について従来の継代培養を廃して永久凍結保存への移行を推し進め、業務としての凍結保存のルーチン化に大きく貢献しました。その後、緑藻や紅藻といった真核藻類の凍結保存条件の検討を行い、微生物資源学会誌に成果論文を報告するとともに保存技術講座の執筆を行っています。
さらに、長期の継代培養が困難な珪藻やプラシノ藻に関しても細かな凍結条件の検討を行い、全保存株数の38%にあたる1,451株について安定的な凍結保存が出来るようになりました。

今後も藻類カルチャーコレクションをより充実させるために努めていきたいと、森研究員は語っています。

霞ヶ浦に出現する藍藻類でアオコを形成するミクロキスティス
霞ヶ浦に出現する藍藻類でアオコを形成するドリコスぺルマム
霞ヶ浦に出現する緑藻類パンドリナ
霞ヶ浦に出現する藍藻類でアオコを形成する
ミクロキスティス
霞ヶ浦に出現する藍藻類でアオコを形成する
ドリコスぺルマム
霞ヶ浦に出現する緑藻類パンドリナ

藻類カルチャーコレクションなど藻類に関する情報は国立研究開発法人国立環境研究所微生物系統保存施設(NIESコレクション)のウェブサイト(http://mcc.nies.go.jp/index.html)をご覧ください。