MATAGIプロジェクトアンケート結果まとまる野生獣皮の市場開拓に向け、産地と使い手をつなぐマッチングを要望する声
2019年09月19日お知らせ
MATAGIプロジェクト実行委員会(事務局:地球・人間環境フォーラム)では、野生獣原皮の産地314の団体・個人を対象に、野生獣の皮革活用促進のための課題などについてアンケート調査を実施した。
産地、使い手双方の課題として、コミュニケーション不足による市場開拓の遅れなどが指摘された。実行委員会では関係者のマッチングを進めるため、産地、使い手、消費者なども参加するプラットホームを早急に構築する方針だ。
MATAGIプロジェクトは、産地から送られてきた生の皮をなめして革の状態にして、産地に送り返すことを主な業務にしている。しかし、送り返された革がどのように有効活用されているのか、その全体的な実態はつかめていない。
今回のアンケートは産地の取り組みの実態、課題等を集約し、同時に革を使う側の人たちの要望や課題を聞くことにより、両者のニーズをマッチングするためのプラットホームづくりの一助とするために実施した。
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産地の悩みは販売・流通の確保
実行委員である山口産業に皮のなめしを依頼してくる産地は300団体以上になるが、今回のアンケートの有効回答数は46件と少なかった。皮のなめしを依頼してくる人の多くが、個人や夫婦でやっているなど小規模なもので、事業化の可能性まで回答を求めたアンケートへの対応が難しかったためだと思われる。
しかし、回答してくれた46件は、「革製品を販売している」「販売を検討している」を合わせて95.6%に上り、現実的な取り組みを通じた要望や課題が浮き彫りになった。
組織の規模は、1人、または2~5人のところが51%に上り(Q4グラフ参照)、20人以上は13%だった。扱っている獣皮の量は、年間1~20頭が41%、50頭以上が35%、21頭~49頭が24%で、獣皮の種類は鹿、猪が大半であった。中にはヌートリア、アライグマなどの外来種を扱っているところもあった。
皮をなめした際の質に影響する皮はぎは、自分で行うと答えたところが54%で、外部に依頼するところは39%だった。自分で皮はぎをすると答えたうち、「皮はぎ、脂の除去が難しい」とした声が3件あった。MATAGIプロジェクトでは年に2回程度、猟師らによる皮はぎ講習会を開いているが、皮はぎ技術の向上と皮はぎ自体の負担を軽減するため、講習会開催の頻度を増やすことも検討する必要がある。
次に、どのような皮革製品を作っているか聞いたところ、雑貨類(28件)、財布などの小物(24件)、バッグ(14件)、靴(3件)の順だった。製作の大半(57%)は自社製作で、外部委託は29%だった。
製品の売れ行きについては販路があり販売は順調と答えたところは6件、販路がありさらに売り先の増加を検討しているところも10件あった。しかし、販路の開拓に苦労しているところも10件、開拓中としたところが10件あり、安定的な販路、市場がないことが産地の悩みになっている(Q11グラフ参照)。産地にとっては、皮革製品づくりと販売・流通の確保が一番の課題であることが浮き彫りになった。(Q13グラフ参照)
使い手の要望は購入先の特定と価格安定
使い手に対するアンケートでは、9団体1個人からの回答があった。
野生獣革の活用が進むための条件については、「獣革の購入先がはっきりしている」(6件)、「価格が安定している」(6件)、「品質が安定している」(5件)、「安定供給」(1件)となっていた。
また具体的な取り組みについては、商品開発・販売に成功するためには、「素材の持つストーリー性に着目する」(5件)と指摘する声が多かった。野生獣皮に残された傷が、山中を駆け回っていた際にできた傷と伝えるだけで消費者の興味を引き、傷を生かしたジャンパーが高額で買われたと話す人もいて、家畜の革と違った風合いや野生らしさを求める消費者もいるようだ。
さらに獣皮活用の成功事例や獣皮活用法についての勉強会・研修の開催(3件)、産地、使い手、消費者のマッチングをするためのプラットホームの構築(3件)、皮革の展示会などでの消費者へのPR(2件)、自治体の理解・支援(2件)も使い手側からの要望として挙げられた。
※本アンケートはトヨタ環境活動助成プログラムの助成を受けて実施しています。
<お問い合わせ先>
MATAGIプロジェクト実行委員会事務局/地球・人間環境フォーラム(担当:平野、坂本)
〒111-0051東京都台東区蔵前3-17-3-8F
TEL:03-5825-9735/FAX:03-5825-9737/Eメール:sakamoto(a)gef.or.jp((a)を@に変える)