1999年11月15日から2週間ブラジルのレシフェで開催されていた砂漠化対処条約第3回締約国会議は、26日すべての日程を終えた。主たる検討結果としては、@レシフェ・イニシアチブの採択(COP4で条約実施のための取り決めに関する宣言を採択するために各国は事務局に案を提出する)、Aアフリカの締約国の条約実施のレビュー、B条約実施の定期的レビューのための検討体制−−などである。
20日で4日間の日程を終えた科学技術委員会(CST)では、条約実施のモニタリングのための基準と指標、早期警戒システム、伝統的知識、専門家名簿の維持・管理などについて検討が行われた。
主要な決定事項・および議論の流れは以下の通り。
(1)期間
平成11年11月15日(月)〜11月26日(金)
(2)場所
レシフェ(ブラジル)
(3)我が国からの出席者
在レシフェ池田総領事、東京大学武内教授、鳥取大学乾燥地研究センター 稲永所長のほか、環境庁、外務省、農水省より出席。
2.締約国会議(COP)
(1)主要な議題
・アフリカの締約国による条約実施、先進締約国、国際機関、NGO等によ る支援措置、条約実施のレビュー等
・条約実施の定期的レビューのための追加的手続き又は制度上の仕組みの 検討
・新たな地域附属書(中東欧諸国の地域実施附属書)の検討
・第4回及び第5回締約国会議の作業計画
・事務局の中期戦略の検討
・2000/2001年の2カ年の事務局予算等
(2)主な検討結果
・COP4において、条約実施の促進のための約束に関する宣言を採択するため、締約国等は2000年4月末までに事務局に提案を出すこと等を内容とする決議「レシフェ・イニシアティブ」が採択された。
・アフリカの締約国による条約実施、先進締約国、国際機関等による支援措置、条約実施状況のレビューが行われ、これまでの実績を評価するとともに、今後の一層の取組を呼びかける内容の決議を採択。
・条約実施の定期的レビューのための追加的手続き又は制度上の仕組みについては、(i)COP3及びCOP4に提出された国別報告書の詳細レビューのための小委員会をCOP4において設置すること、(ii)COP4又はCOP5においてレビュー制度をさらに発展させるため、締約国等 は2000年4月末までにコメントを提出すること等を内容とする決議を採択。
・新たな地域実施附属書については、COP4での採択に向け、協議を継続すること等を決定。
・第4回及び第5回締約国会議の作業計画について、COP4(必要に応じてCOP5)では、(@)アフリカ以外の地域の被影響国による条約の実施状況等のレビュー、これらに対する先進締約国の支援状況等のレビュー、新たな地域附属書の検討・採択、(A)科学技術委員会(CST)の報告のレビュー、(B)地球機構(資金調達を促進するための仕組み)の報告のレビュー等を議題に含めることを決定。
・事務局の中期戦略について、COP2では事務局の機能拡大につながるような提案がなされ、事務局の肥大化傾向に強い懸念をもつ先進国側と、事務局案を支持する途上国側で意見が分かれた。今回の会合では、各国からのコメントを考慮して事務局が改訂した中期戦略をもとに議論が行われ、(@)事務局が作成した中期戦略に留意すること、(A)事務局はその活動計画に優先順位をつけること、(B)事務局の活動をレビューし、COP6に報告すること等を内容とする決議を採択。
・2000/2001年事務局予算に関しては、(i)2000年の事務局予算は689万7900ドル、2001年は676万2500ドルとすること(1999年は610万ドル)、(ii)地域事務所については、その必要性、フィージビリティ、形態、コストについて事務局長がCOP4に報告し、COPにおいて検討すること等を決定。
・また、COP4を2000年10月16日〜27日まで開催すること、開催場所は、事務局が2000年2月末までにホスト国を募り、ホスト国がない場合は、ボンにおいて開催することを決定。
COP2の決議により、締約国会議はアドホックパネルから提案された指標のためのフレームワークを是認した。各国政府は指標の使用を始め、COP3で国別報告にそれらの指標の実用性いついて報告することを要請された。よって関連する情報は、ICCD/COP(3)/5/Add.2の中のアフリカ諸国の国別レポートに盛り込まれることになった。
COP3での決定事項<議論の流れ>
日本は各国の取り組みの達成状況を明らかにするような数値指標についての議論の必要性を主張し、これは決定事項に反映された。また、指標の実地での試行を強化するためのプログラムの強化(OSS)、指標の使用にあたっての能力形成(CLISS)、被影響国に対する科学的な支援(EU)などが主張された。
早期警戒システムについては、COP2での決定事項の中で、COP3の優先的に扱われる議題とされており、水資源管理等も含む最も広い範囲のものを対象とするとされ、各国はこの分野に関する実績についての文書を事務局に提出することが求められた。 事務局に提出されたのは、カナダ、フランス、イタリア、マリ、サウジアラビア、スイスの6カ国の文書(ICCD/COP(3)/CST/6)、これらはサウジアラビアの1ページのものからカナダの提出した17ページのものまでであり、自国内、あるいは地域内の既存のEWSに関わるシステム、データベース、自然資源のモニター等のレビュー、また海外援助の同分野に関連した取り組みについて記述されたものであった。
COP3での主要な決定事項・10人の専門家からなるアドホックパネルの指名を決定。以下の事項を検討する。
アドホックパネルの構成は以下の通り。
- データ収集、アクセス、統合の方法
- 干ばつおよび砂漠化の評価と予測、および対応手段
- EWSおよび砂漠化のモニタリングと評価の適用、特にNAPでの適用について適当なメカニズムについての情報普及と検討
・武内和彦(日本)
・Zengyuan Li(中国)
・Richard Muyungi(タンザニア)
・Abdelaf Ghebalou(アルジェリア)
・Valentin Sofroni(モルドバ)
・Giorgi Gotsiridze(グルジア)
・ (ドイツ)
・ (トルコ)
・ (アルゼンチン)
・ (チリ)
<COP3での議論の流れ>
CSTでは、日本は宇宙関連技術、砂漠化のモニタリングと評価の重要性を主張。アジア地域でのTPN1の活動結果をCSTに反映させることをめざした。専門家によるアドホックパネルの設立については、まずオープンエンドのワーキンググループが同パネルの委任事項案を策定し、そのドラフトをもとに設立が議論された。議論ではEWSのもつ広い意味合いのうちどこに重点をおくかという点において各国の多様な意見が次々に出される局面もあり、干ばつへの準備、土壌や水資源の管理、女性の役割、地元の知識の活用等の重要性、システムには結局は先進技術ではなく単純な技術の積み重ねである点の協調、システムのエンドユーザーの特定が重要、等の指摘が各国からなされた。
注)採択時にDraftから「条約実施の中期戦略を提案するため」という文言が削除され、また、「UNDNDR(UN Decade for Natural Disaster Reduction)のフォローアップの結果を考慮に入れ」の代わりに「UNDNDRのフォローアップと協力して」という文言となった。
同決議により、締約国会議は以下の委任事項のもとに伝統的知識に関するアドホックパネルを設立した。
@)伝統知識とその実践による社会経済的影響等の阻害要因
A)伝統知識と近代科学技術の効果的な連携のための戦略
B)成功手法の促進と情報交換のためのメカニズム
この決議に基づき、アドホックパネルは1999年7月イタリアで開催された。このアドホックパネルレポート(ICCD/COP(3)/cst/3)はCSTの開催前に作成され、CSTはこの報告を検討し、適当な勧告をCOPに提出し、再度パネルを設置するかどうか検討することが求められていた。
COP3での主要な決定事項
以下の内容のアドホックパネルを指名。アドホックパネルの構成は、イラン、シリア、アルメニア、ロマニア、マリ、コンゴ、イタリア、スイス、キューバ、ペルー。
- 伝統知識と近代知識の融合の促進
- 地域ネットワーク、地域調整団体、国のフォーカルポイントなどがどのように作業プログラムの中に伝統知識・地元の知識を取り入れたかを評価
- 伝統知識の経済,社会、エコロジカルな視点からの利益についての評価
・次回のCSTまでに少なくとも1回のビューロー会合を開催し、必要なレビューを行うとともに次回のCSTの開催の準備を行う。