モンゴルでの砂漠化対処、気候変動への対処
当フォーラムでは、2004年度からモンゴル国で砂漠化対処、気候変動への適応に関する調査や試行を行ってきました。
調査や試行を行っているのは同国ドンドゴビ県サインツァガーン郡です。同郡は、モンゴル国の首都・ウランバートルから南に約300km、寒く、乾燥しています(年平均降水量:130mm、年平均気温摂氏2.3度)。この地域の特徴は降水量が少なく、変動が激しいことにあります。そのような厳しい自然の中で、人々の暮らしを持続可能にしてきたのが遊牧です。
遊牧とは牧畜を主な生業とする人々がヤギ、ヒツジなどの家畜とともにエサとなる植物や水を求めて移動することです。移動式住居“ゲル”はすぐにたためるため移動の準備は数時間で終わります。それらをトラックに乗せて、次の放牧地を目指します。ふだんは数km~数十kmの決まった範囲を季節ごとに移動します。干ばつ等の災害が起こると、いつもと違う放牧地に移動します。それは数百kmに及ぶこともあります。
井戸周辺での土地劣化の緩和
モンゴル国では利用可能な井戸の周辺に家畜が過剰に集まることで井戸周辺の放牧地が劣化していることが問題となっています。それを緩和するために、2004年度から2006年度にかけて故障して使われなくなっていた井戸を牧畜民自らが修理し、管理することで、家畜が特定の井戸に集中しないようにするプロジェクトを行いました(環境省「砂漠化防止対策推進支援調査業務」、ドンドゴビ県、ヘンティ県、ウムヌゴビ県で実施)。
気候変動への適応
モンゴル国では将来、気候変動の影響によって、これまでよりも強い干ばつの発生が予想されています。干ばつの影響を受けにくい生計にするために様々な技術を牧畜民とともに試行しました(地下水を用いた飼料栽培とそれを活用した乳牛の飼育及びアイスクリームの加工、搾乳量の多い在来種のヤギの導入、フェルトの加工による所得向上など、環境省「気候変動影響等を勘案した砂漠化対策形成の検討業務」、2007年度~2010年度)。
放牧地の持続的利用
モンゴル国では郡毎に放牧地を持続的に利用するための計画が作成されています。しかし、様々な理由からうまく機能していない部分もあります。2011年度から2015年度にかけて、その計画の実効性を高めるために、周辺の郡との協力関係を強化するための郡間協定の締結、郡内にある災害時に頼りになる植物を平時にはとっておき、いざという時に利用する取り組みや郡の放牧地利用計画への牧畜民の参加を促す仕組みを試行しました(環境省「乾燥地における住民参加による持続可能な牧草地利用等検討業務」)。
砂漠化対処条約への貢献
砂漠化対処条約でサイドイベントを開催し、モンゴル国での調査や試行から得られた知見を、モンゴル国政府や同国の研究機関とともに国際社会に還元しました(環境省事業)。
作成日:2016年06月13日 14時53分
更新日:2017年01月18日 14時33分